2024年を振り返って

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昨年、「最低でも年1回はウイスキーの振り返りを兼ねてブログを更新したい」と書いたのがつい先日のようですが、気づけばもう2024年も年の瀬に差しかかっています。毎年言い訳ばかりで恐縮ですが、仕事やプライベートに加えて、ウイスキー関連の活動そのものも形を変えながら増えたり減ったりし、なかなか落ち着いて文章を書くタイミングをつかむのが難しく感じています。それでも今年は何とか、年内に滑り込みで振り返りを綴ってみようと思います。

年始からの波乱:能登半島地震

まずは2024年の冒頭を語る上で外せないのが、能登半島地震です。ちょうどお正月休みで石川県内の妻の実家に行った帰り道、あの大きな揺れがありました。実は能登半島にはかつて3年ほど住んでいた時期があり、そこで知り合った方々もいらっしゃいます。ニュースに出てくる地名や被災状況を見聞きするたびに、他人事とは思えない気持ちでした。幸いにして私自身の直接的な被害はありませんでしたが、知り合いの中には家屋に大きなダメージを受けた人もおり、さらに行方不明者の中で“どこかで聞いたことのあるお名前”を見つけるなど、個人的にもかなり重たいスタートだったのを思い出します。
2022年の頃はコロナ禍もあって気が塞ぎがちだったのですが、ようやく外出やイベント参加がしやすくなってきた…という矢先にこういう事態が起きると、改めて「自然災害はいつ、どこで起こるか分からないものだな」と痛感せざるを得ません。ただ、そこでうずくまってしまうわけにもいかないので、被災地の情報を追いながら、寄付や知人との連絡など、自分のできる範囲のことをしながら、少しずつ2024年の日常を始動させました。

家族が増えたことによる生活リズムの変化

そしてもう一つ、個人的に今年を語るうえで大きい出来事が「子どもの誕生」です。1月の出産だったので、年の初めから一気に生活リズムが激変しました。過去の振り返りでも「家飲みの時間がなかなか取れない」と嘆いていましたが、2024年はさらに育児と仕事の両立が本格化し、ウイスキーをじっくり楽しむ余裕がこれまで以上に削られた印象があります。

子どもが小さいうちは夜泣きも頻繁ですし、家事や睡眠リズムも不安定。とてもじゃないですが「夜な夜なバーに繰り出す」あるいは「家でグラスを傾ける」というわけにはいかず、半年くらいはほとんどウイスキーに触れない日々が続きました。以前からの課題である「忙しさを言い訳に、ブログやテイスティング記録をサボってしまう」という自己反省は、この2024年でもある意味繰り返してしまったかもしれません。

しかしながら、子どもが生まれたからこそ気づいた新たな面白さもあります。毎晩飲むわけにはいきませんが、むしろウイスキーの世界にどっぷり浸かっていたころには感じられなかった「飲めない視点」を体験することができました。ウイスキーは本気で取り組んでいるつもりではあり、イベントに時々参加したりするわけですがそれを生業にしている方々とは大きな隔たりはあって、僕は当たり前ですがアマチュアなのです。もちろん業界のトレンドやイベント情報は常に追いかけたいのですが、正直いまは育児も仕事も優先せざるを得ないですし、そこに対してじれったいと思う部分と、逆に「アマチュアとしてやりたいと思うことはやっていこう」と言う割り切れた部分が混在している年でした。コロナ禍で痛感していましたが、この立場だからこそ、まずは長く続けていくことを最優先にしたいですね。

出張ラッシュと各地のバー巡り

そんな育児中心の生活を送っていたはずなのに、2024年は出張が例年になく多い年でもありました。札幌、東京、大阪、京都、福岡、四国…と、およそ1年でこれだけ回ったのは久しぶりかもしれません。もちろん出張自体はバタバタで大変ですし、育児中の家族に負担をかけてしまうので「申し訳ないな」と感じる面もありましたが、一方で仕事が終わった夜だけわずかに時間を作ってバーに顔を出してみると、その土地の方が集うお店の雰囲気を味わったり、懐かしい知り合いとばったり再会することもあったりして、これがまた最高の息抜きになります。

各都市を巡る中で強く感じたのは、「地域ごとにウイスキーの捉え方や楽しみ方が微妙に違う」ということです。2024年の今年はさらに各地に足を運んだことで、同じ銘柄でも置いているバーによって味のとらえ方を話し合う雰囲気が違ったり、ラインナップが違うのがモルトバーの楽しみの1つだったりします。ボトルが高額になりなかなか買えないご時世だからこそ、特色が一層出ると言えばでるのかもしれません。現行をある程度買える胆力があるバーは自ずと限られてきますので、それだけ勢いを感じられるバーにお邪魔できているのかもしれません。

全国各地の出張の際に、バーカウンターに座ったら隣の方が久々に顔を合わせる知人だった、という経験が今年だけで何回かあり、ご縁に感謝する一年でもありました。来年も出張が多くなるようなら、仕事に支障が出ない範囲で楽しめたらと思います。

今年飲んだ中で一番印象的だったコンバルモア1962

さて、2024年もいろいろなウイスキーをいただく機会がありましたが、やはり一番の衝撃を受けたのは「コンバルモア1960(Convalmore 1960)」でしょう。個人的に“コンバルモア=1970年代後半のワクシー(蝋っぽい)ニュアンスが印象的な蒸留所”というイメージを持っていて、実際に1977ヴィンテージなども過去に飲んだ経験があります。ですが、今回巡り合った1960ヴィンテージはまるで別の蒸留所じゃないかと思うほどに個性が異なっていました。

確かにベースとなるワクシーさや、オールド感は感じるのですが、同時にものすごくフルーティーで、まるでキャンディドロップのような優しい甘みと香りが口の中で広がります。最初のアタックは柔らかいのに、飲み込む直前にちょっと艶やかなシェリー感が顔をのぞかせるという、なんとも贅沢な味わいでした。1960年代のコンバルモアは、70年代のそれとはハウススタイル自体がかなり違うのだろうと改めて思わされました。こういう“同じ蒸留所でも時代によってガラッと表情が変わる”のがシングルモルトの面白さであり、オールドボトルの魅力でもありますよね。

Podcast「whisky connect」をはじめました

そして、2024年における私のウイスキー関連活動の中で大きな位置を占めるのが、Podcast「whisky connect」(通称ウイコネ)です。10月からDrinker’s Loungeさんと始めました。最初は「手探り状態でゆるく語れればいいかな」と思っていたのですが、意外なことにリスナーから「面白いです」というお話しをいただいたり、業界の方からも「よく聴いてます、数十年続けてください」といったメッセージをいただく機会も増え、正直ちょっと面食らっています。バーでカウンターに座ったら、「すみません、ラジオ(Podcast)やってませんか?」と声をかけられたことが何度かありまして、所謂“声バレ”という現象も経験済みです(笑)。

特に印象深かったのが、ドリラジさんと振り返った“ここ10年のウイスキー界”に関するトピックです。「10年というスパンで見たウイスキーの変遷や、自分たちがその間どう楽しんできたか」を語り合いました。あまり固いテーマではなかったのですが、「こうして振り返ってみるとウイスキー自体のブームの波とか、リリースの傾向とか、SNSの浸透具合とか、いろんなものが急速に変わったよね」という話になり、聴いてくださったリスナーからも「あの頃は品薄なんて考えられなかった」「いろんな視点が感じられて面白かった」といった感想が届き、話してよかったなと思いました。

TwitterなどのSNSは発信が手軽な半面、140文字という制限があったり、情報が流れてしまいやすかったりして、体系的な記録や議論の場としてはやや使いにくい面もあります。そこでPodcastでのトークを残しておくことで、そのときの空気感や私たちの率直な言葉をアーカイブできるのは大きいと感じています。もちろん文章の良さも捨てられませんが、音声には音声ならではの味があるようです。世は動画コンテンツ全盛期ですが、音声コンテンツの良さは端的に話さなくて良いのでじっくりとしたテーマの掘り下げに向いていること、何かの作業のついでにながら聞きできる事かなと思っています。ぜひご興味持たれた方はお聞きください。

ローカル活動とオンライン発信のはざま

北陸ウイスキークラブとしては、ブースはほそぼそと(他力本願で)出展することはできましたが、セミナー開催などには力を入れられず、少し物足りない気持ちがあります。能登半島地震の影響もあり、特に2024年前半は

地元ではウイスキーを楽しむどころではない方も多かったですし、私自身も子育てで時間を取られる中で新企画を考える余裕がなかったというのが正直なところです。

ただ、Podcastのおかげで情報発信の手段が増えたことは大きいですね。北陸という地域性に限らず、全国のリスナーに向けて気軽に配信できるので、私自身「地域活動=オフライン、広域活動=オンライン」という形で、両面のバランスを取っていくのもありかなと考えています。過去には「初心者の飲み手が増えたものの、ウイスキーの奥深さに触れる前にリリースや味わいが刻々と変わってしまうジレンマ」を書きましたが、そのような人はこの地域だけに限った話ではないですし、いつの時代にもあることだったりします。なのでオンサイトでやることの良さがあることは分かりつつも、我々が音声を通じてウイスキーの入り口を知ったり、バーへ行くハードルを下げたりできるのなら、やる意味は十分あると感じています。

実は5年以上前から漠然と思い描いている「ウイスキー好き同士をもっと手軽につなげる何かを作りたい」というアイデアは、2024年になって少しずつ形が見え始めています。以前から「便利アプリみたいなものを作れたら」と言っていましたが、想定しているのは、個人間でのウイスキーのやりとりを便利にするツールなどです。「冬休みの宿題」になるわけですが、果たして完成するのでしょうか。。。

もちろん、同様のコンセプトで海外発のアプリやウェブサービスも存在しますし、日本語対応しているところもあるにはありますが、まだまだ「地域でバーを営んでいる方」と「各地を飛び回るウイスキーファン」を有機的につなげるところまではいっていない印象です。いきなり大きなことをするのは難しいので、まずは小規模にプロトタイプを作って、そこにコミュニティの仲間やPodcastのリスナーを招待してみる。そこから何か新しい化学反応が生まれればいいなと思っています。2025年あたりに何かしらのめどをつけたいですが、子育てとの両立もあるので、焦らずじっくり形にしていきたい所存です。そう言いながら来年も終わってしまうような気がしています。

ブログと音声、そして次世代への情報継承

このブログを読み続けてくださっている方(もしまだいてくださるなら)に感謝しつつ、2024年を総括すると、「形は変われどウイスキーは相変わらず面白い」と改めて思う1年でした。能登半島地震や子育てなど暗く大変なトピックが多かったにもかかわらず、地方出張でのバー巡りやいろんなボトルとの出会い、そしてPodcastでの発信と“声バレ”エピソードなど、振り返ればウイスキーにまつわる思い出がたくさん残っています。

2022年の振り返りでは、松木先生のブログに多大な影響を受けたことや、ブログというメディアのアーカイブ性の大切さを強く訴えていました。2024年の現在、松木先生のブログが終了してしまったことで、一つの時代が終わったような寂しさを感じている方も多いのではないでしょうか。私自身、あのブログで勉強した身として、その存在の大きさを改めて痛感しています。代わりにはなれないのですが、お世話になった分、自分なりに「声」や「文字」を使ってウイスキーの面白さを発信し続けなくてはいけないと思うのです。これはDrinker’s Loungeさんも似たような想いを持たれていました。

もちろん、子育てや本業の兼ね合いで頻繁には更新できませんし、自分自身まだまだ勉強中の立場で偉そうなことを言えるわけでもありません。ただ、こうして文章という形で記しておくことで、未来の誰かが読み返したときに「2024年はこんな雰囲気だったのか」「あのボトルはそんな雰囲気だったのか」「自分はこう思ったけどなあ」と感じ取ってもらえたら、それだけでブログの存在意義は十分あるように思えます。

2025年に向けて

最後に、2025年の展望や抱負について少し書いて締めくくりたいと思います。まずは前述の「便利アプリ」構想を具体化することが大きな目標です。Podcast「whisky connect」も、できればゲストの幅を広げたり、テーマをバリエーション豊かにしたりして、もっといろいろな人に“音声の魅力”を届けていきたいと思っています。出張も来年どれだけあるか分かりませんが、続くようであれば、また新たな地域を訪れたり、そこでの出会いや経験をブログやPodcastで紹介したりして、「地元でしか味わえないウイスキーの楽しみ」を多くの方にシェアできれば幸いです。

ウイスキーの市場はこの10数年の価格高騰や転売騒ぎが少し落ち着き始めているようにも見えますが、一方で別の形でのブームや注目度が高まるかもしれません。何が起きてもおかしくないこの時代、私たちはウイスキーがもたらす“人と人をつなぐ力”を大切にしながら、次の世代の飲み手たちへ少しでもプラスになるような情報や空間を提供できるように努めたい、そう記すことで少しでも実行できるんじゃないかと思ったりしています。

ここまで読んでくださった皆さま、本当にありがとうございます。2024年は私にとって少し厳しい年でもありましたが、その中で育児の合間を縫って好きなウイスキーを飲めたり、全国各地のバーで出会った人と話せたり、Podcastを通じて声を届けられたりと、多くの学びと喜びに溢れた年でもありました。これからもウイスキーを楽しむ心を忘れずに、ブログ、Podcast、SNSなどを通じて、細々とでも情報を発信していければと思います。

それでは皆さま、どうぞよいお年をお迎えください。そして2025年も、また何かしらの形でお目にかかれることを楽しみにしております。

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