スプリングバンク1992-2017 25年 和–Nagomi– for Shinanoya 49.2%

スプリングバンク NAGOMI 信濃屋 1992 キャンベルタウン
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フルーティでバンクらしい味わいがちゃんと感じられる、ナイスなリリース。
高価な価格も今の市場では仕方がない。

ボトルスペック

生産地域:キャンベルタウン
蒸留所名:スプリングバンク
オフィシャル/ボトラー名:THE WHISKY AGENCY and SHINANOYA
樽の種類:HOGSHEAD
カスクナンバー:—
蒸留年:1992
熟成年数:25年
ボトリング年:2017

解説

キャンベルタウンはスコットランド西部のキンタイア半島にある小さな町で、18世紀には20-30の蒸溜所があったと言われますが、アメリカの禁酒法などや石炭の枯渇により蒸溜所が激減、1935年までには蒸溜所はスプリングバンクとグレンスコシアしかなくなりました。2004年にはグレンガイル蒸溜所(キルケラン)が作られるわけです。スプリングバンクの経営を行っているJ&Aミッチェル社は。スプリングバンクは元々2.5回蒸留(80%を3回蒸留、20%を2回蒸留としているようです)を行うライトピーテッドな蒸溜所ですが、ヘーゼルバーンやロングロウを作り分けたり、100%フロアモルティングを行ったりと、まさに昔ながらの造りを維持している数少ない蒸留所です。2013年よりGavin McLachlanが蒸留所のマネージャーとなり、スプリングバンクのリリースは更に評価が高くなり、世界的に人気なシングルモルトの一つとなっています。 2017年よりニューラベルとなり、10年及び12年カスクストレングス、15年、18年に21年、25年が年1回の限定リリースですが大体直ぐに完売、日本向けのリリースも少なく、ウイスク・イーが年1回のみ特別にボトリング出来ると言われています。

スプリングバンクはこのような状況でも増産は行わず、地元雇用を増やすことに注力しているようです。2017年にはボトリングラインの新調、2020年には新しい保税倉庫が完成する予定ですが、どれも雇用者の仕事がなくならないように調整しているようです。このような意志決定のスタイルは、半ば公的な会社の振る舞いとすら感じます。

あくまでボトリングホールのスタッフの労務軽減のために導入した機材であり、スタッフ数に影響が出ないことが重要です。この機械(ボトリングの設備)で誰かの仕事が奪われるようなことがあったなら、この機械を導入しなかったでしょう。

http://springbank.scot/news/2017/03/24/our-new-bottling-line/

さて、こんなスプリングバンク蒸留所ですが、蒸留所は1979年から1987年まで閉鎖しており、フロアモルティングは1992年から再開しています。ヘビードリンカーからは1992年以前と以後で、スプリングバンクらしいブリニーなニュアンスが異なると言われています。1992年以降は過去のバンクらしいブリニーなニュアンスを伴うフルーティな味わいが期待できます。

考察

今回のボトルはTHE WHISKY AGENCYとSHINANOYAのジョイントで、2017年頃のボトリングですが、販売は2019年となっています。フルーティなモルトのセレクションに定評のあるエージェンシーのカーステン氏と北梶さんがチョイスしたと考えると、そういう味わいなのだろうと発売前から想像させられるスペックでした。海外のフェスで先行披露していたようで、わざとなのかたまたまなのかは分かりかねますが、市場が25年のカスクに出せる価格として妥当と思えるようなタイミングでリリースされました。高価は高価なのですが、25年が46%の加水で7万ほどすることを考慮すると、かなり妥当な価格と言えるでしょう。

味わいですが良いバンクに時々感じるようないちごのニュアンスを少しだけ帯びた、フルーティで穏やかなバンクでした。2014年あたりのバンク21年や数年前の25年の味わいに近く、ここ最近の21年や25年のオフィシャルによくあるラムカスクの影響が少ないのが逆に新鮮でした。ラムカスク美味しいのですが、リリースが続くと変わり種ということもあり少し食傷気味に感じる時期。そんな中カスクストレングスで正統派の味わいなバンクがリリースされたのは、良いタイミングだったなと思います。

25年の良さ、シングルカスクの良さを十分に感じられる、正統派のバンクの味わいと考えます。なかなかバンクの長熟も飲めなくなってきましたので、こういうボトルが日本市場にあるのは素直に感謝すべきだなと感じました。

余談

思えば年々日本でウイスキーを購入することが少なくなってきていますが、自分の嗜好が変わっていったことだけではなく、日本入荷が少なく、競争の少ない海外に向かっている節は否めません。その中でSHINANOYAという存在は2019年もしっかりと日本市場に存在感を示してくださったように思います。

2019年もいろいろな方にお世話になりました。ありがとうございました。
個人的な今年の総括をここに記し、始めたばかりのブログですが今年を締めくくりたいと思います。

国内ボトラーズ、プライベートボトル(PB)

今年は特にTHE WHISKY HOOPと信濃屋の日本市場への貢献が本当にすごかった年だったと感じます。来年以降は色々と今まで以上に維持や発展が大変な年になると思いますが、逆境があったとしても負けずに良リリースの継続を期待したいですね。

PBも多い年だったように思います。記念ボトルも多かったですね。スコッチモルト販売さんの40周年、池袋ジェイズ・バーの25周年、キャンベルタウンロッホさんの20周年、バーシープさんの20周年、カルーソーさん15周年、大阪ミンモアハウスさんと高松シャムロックさんの10周年、ラディさん10周年…とパッと頭に浮かぶだけでもこれだけの記念PBが出ています。写真撮り忘れのボトルが多いですが、ある範囲でアップしてみました。

またYouTuber兼酒屋のモルトヤマさんも、会社の規模が信濃屋さんやフープとは違うのに精力的にリリースを続けていたのは印象的でした。

ボトラーズ

一方でボトラーズ全体としてみると、元気のないボトラーも結構出てきたなあと言うのが正直な印象です。その点ゴードン&マクファイルのコニサーズ・チョイスシリーズや、シグナトリーは安定して良いリリースが多かったように思います。G&Mは全体的に高価ですがどれも安定しており、シグナトリーは当たりボトルはどこかとジョイントしていることが多いなという印象でした。いずれにしてもこのご時世にこれだけのリリースがあるのはありがたいことです。

オフィシャル

オフィシャルは良いボトルたくさん出ていましたね。残念ながら国内にあまり入ってきませんでしたが、00年代の良さが光るようなボトルが結構出始めていて、今後のリリースがますます楽しみになっています。クライヌリッシュがバイセン、キルケランが15年の節目の年を迎えました。特にオフィシャルは国内市場は正直あまり優遇されていないように感じており、インポーター、酒屋、バー、酒屋それぞれがさらに大変な時期を迎えるような予感がしています。

だいぶ余談が過ぎてしまいました。この記事はここらへんにします。皆様良いお年をお迎えください。

テイスティングコメント

香りはオレンジピール、少し木イチゴ、ハニーシロップ、穏やかな麦の香り、ピート、まだやや堅く香り立ちは弱い。
飲むと柔らかい麦感とハニーシロップ、こなれたピート感とドライフルーツのストロベリー、柔らかいが十分ジューシー、余韻は少し樽感が残る。

評価

評価:S

言いたかったこと

この味わいの長熟バンクはなかなか見なくなった。
今年一年も大変お世話になりました。

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