2023年のウイスキー活動を振り返って

雑記
何本か買いました
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ほとんどブログを更新していない自分ですが、一応ウイスキーをたくさん飲ませてもらっている身として、縁に一度くらいはまとめておこうと意地になってまとめている「一年を振り返って」の記事。需要があるのかわかりませんが、何人かに楽しみにしていると言われたり、数年後に振り返るための記録作りとして、年賀状のような感覚で作っている記事だったりします。

ということで今年は皆さんどんな年だったでしょうか?前半はまだコロナ禍にあり、私自身はなかなか表立って飲みに行けない1年でした。後半は徐々に外に飲みに行ったり、堂々とイベントに行くことができるようになり、コロナ前の習慣が回復しつつあり、変化の多い一年でした。未曾有の円安や社会情勢の変化も大きく、時代のうねりにじわじわと生活が蝕まれていくような感覚もありました。公私共にいろいろ変化があった一年でもあり、特に年度はじめは忙しさと業務変更の慣れなさに圧殺されそうになり、ウイスキーに集中できない時が正直多かった年ではありましたが、それでもいろんな出会いがあり、とても充実した一年となりましたと感じています。
そんな一年ですので、特に後半の振り返りが主になりますが、前半はトピック別、後半は私が写真で残しておいたボトルの写真を振り返りながら、今年1年を振り返っていこうと思います。

トピック別の議論

まずはウイスキーを取り巻く話から。個別のボトルというよりもここ1年ウイスキーに触れる中で感じたことを書いていきます。

  1. トピック1: ウイスキーの価格高騰について
  2. トピック2 プライベートボトルやボトラー並行輸入の台頭
  3. トピック3: オークション市場の変化
  4. トピック4: ウイスキーフェス
  5. トピック5: ジャパニーズウイスキー
  6. 美味しかったボトル
    1. グレンバーギー 1995 27年 トンプソンブラザーズ for ベイヤフルール
    2. クラガンモア 1989 COD BAR PARKMORE 20th Anniversary
    3. アードモア 1990 32年 57% リフィルバット / ハンターレイン オールド&レア for モルトヤマ10周年記念
    4. アイリッシュ 1988 33年 54.8% for Casky, House Welley, Soundwave, WhiskyLovers HK
    5. SCAPA 2003  19年 for THE WHISKY EXCHANGE
    6. SCAPA 22年 2000-2022
    7. キルホーマン 100% ISLAY 2014-2023 for SHINANOYA
    8. グレンキース 1997 25年  RUDDER アートセッション クラシック
    9. ボウモア 2001 XOP for The Whisky Exchange
    10. ヘーゼルバーン 21年
  7. 面白かったボトル・考えさせられたボトル
    1. ベンネヴィス 1991 オールド・アンド・レア 日本向け
    2. マストハウスウイスキー
    3. ストラスアイラ 15年 蒸留所限定
    4. カリラ 2012 トンプソンブラザーズ for ロイヤルマイルウイスキー
    5. スキャパ 1985 G&M プライベートコレクション for 信濃屋 & ウイスキーヒストリー大阪 2023
    6. ダルユーイン 1997 シグナトリー for ウイスキーフープ
    7. グレンエルギン 2007 14年 56.9% ファーストフィルシェリーホグスヘッド / GM コニサーズチョイス for モルトヤマ10周年記念
    8. グレンロッシー 2009 12年 オールドパティキュラー
  8. その他
  9. 最後に

トピック1: ウイスキーの価格高騰について

今年の前半にはウイスキーの価格が高騰し、例えばアイラ島のシングルモルトなどは、短熟であっても2万円を超えるようになりました。例えば、2015年くらいだと、当時はブナハーブンは1980年代後半のノンピートシェリーがメインで、1万円台購入できました。今はブナハーブンは2000年台でも2万、短熟はピートがメインになり、だいぶ異なる酒質の蒸留所と言わざるを得ません。短熟のカリラも2万くらいはしてしまいます。アイラ以外でも、たとえばアランなんかはかなり高くなりました。

価格の高騰は今に始まったことでもありませんが、殊更今年は為替の影響も大きくなっています。1年前には1ポンドが160円程度だったものが、最近では1ポンドが180円ほどにまで上昇しています。給料が上がれば問題ないのでしょうが、残念ながらそううまい話ではなく、物価高も相まって多くの人がウイスキーの購入を躊躇するようになったように思います。特に、冒険をしにくくなったといいますか、レビューなしにウイスキーを買う人はあまり見なくなったような気がしています。

トピック2 プライベートボトルやボトラー並行輸入の台頭

統計を取ったわけではないですが、昨年から今年に入りボトラーズやリテイラーからリリースされるボトルがさらに増えたように思います。また、ウイスキーを販売する小規模な酒屋や、マイクロインポーターも増えているような気がしています。プライベートボトリング(PB)と称する国内インポーターを通じたオリジナルボトルを販売される方も多く、酒屋向けやバー向けのボトルは多く市場に出てきたように思います。PBに関してはかなり多くの種類のボトルがリリースされており、正直全然追えていないのが実情です。今年は東京、大阪、名古屋、札幌に行きましたが、店に置いてあるPB類は、かなり地域差があるように思いました。それはいいことではあるのですが、流通網の違いを強く感じました。PBやマイクロインポーター、小規模な酒屋が増えることにより、それぞれのネットワークに偏りが生じています。またオフィシャルボトルでは特に顕著なようですが、アジア市場向けの商品ができていく一方、日本市場にスペシャリティなオフィシャルボトルのリリースはそこまで多くないように思います。日本市場は縮小傾向にあるとよく言われていますが、その中で小規模な活動がコアなファンへのリリース需要を満たしたり、大手リテーラーがPB(もはやボトラーズの活動と行ってもいいですが)を通じて市場に刺激を与えてくれているというように見えました。時代の流れの中で、なんとか盛り上げようと日本市場に携わっている方々が努力されている結果だと思います。並行輸入業者がブランディングを行いながら、様々なボトルを日本市場に投入する動きもあります。今後の市場の動向は予測が難しいですが、市場は市場の流れに任せるしかありません。個人的には、もっと追いたくなるウイスキーをこれからも日本市場で追って飲めて買えるような状態が続けば良いなと思っています。

こちらは確信がないのですが、X(Twitter)などを見る限り、年々個人輸入が増えていると感じます。国内市場にウイスキーが回らないと、バーに入荷するボトルのハードルは上がることがあります。昔から国外の酒屋で引っ張って来た方々は問題ないのですが、PBが増えることで付き合いで買うボトルも増えるでしょうし、評価を気にせず探索目的でウイスキーを買うという(昔は当たり前にできていたことですが)行為は、バーや個人は難しくなっているように思います。これは結果的に日本市場の閉塞感を高めることになりかねないです。だから何ができるのかというと、何かできるわけでもなく、難しいなあという感想です。強いていうなら今までも東京の一部の回転率の高いバーがボトルの流行を生み出して、全国に広がったという流れがありますが、これは今後も続くのだろうと感じていますし、そういうバーがなくなった時が本当に日本市場が市場が危機的になる時なのでしょう。自分自身を振り返っても、昔より市場の動向を見る視野が狭くなってきたと感じていますので、せめて個人の嗜好としては探索を十分に行っていきたいなと思っています。

トピック3: オークション市場の変化

昨年までは、ウイスキーのオークション市場は、少し良いスペックのボトルは、すぐに売り切れ、その商品が転売され高騰する傾向にありました。いわゆる転売ヤーが暗躍した年でもありました。

しかし、今年の中頃から(もしかしたらそれよりも少し早い時期からかもしれませんが)オークション市場に変化が見られたように感じています。

変化の一つはオークション落札価格です。最近、定価割れするボトルがオークション市場でよく落札されていると聞きます。私はオークションでボトルを売らない人間ですので、安く市場で売られることはありがたいのですが、先ほどのウイスキーを扱う業者が市場に刺激を与えようとしている中で、ニューリリースが高騰し、二次流通価格が落ち着いてきているということは、業界にとってはあまりいいニュースでないように感じます。需要が増えれば市場としては安定するのでしょうが、私の感覚では、ここ数年でウイスキーを買い込む人たちの層が変わったのではないかと推測しています。特に2020年前後から、若い世代の市場への出入り(ボトルを買ったり買わなくなったり)のサイクルが早まっているように思います。たとえばウイスキーを数十本買えば、それ以上のボトルは通常買わなくなる方が多数派です。そういう人が増えていったのかもしれませんし、もともとウイスキー市場にはディープな人しかいなくて、市場が拡大して、ある程度買った人が増えたことで、市場拡大が拡大が収まって来ているだけなのかもしれません。分かりませんが、市場価格の高騰が落ち着いて来たこと、それに伴う購買層の変化が起こっていることは事実なのです。

変化の二つ目は、国外市場でも、一部のボトルの二次流通価格が下がっているということです。もちろん、伝説的なボトルは値上がりしていますが、多くのボトルで市場価値が下がっているものがあります。おそらくこの原因は、中国市場の影響と思われます。噂によると、Yahoo!オークションなどでの代理落札業者の活動が減少しているとのことで、中国市場でウイスキーを購入する人の減少を反映しているのではないかと言われています。いまだに一部の山崎などジャパニーズウイスキーの価格高騰は注目されていますが、ジャパニーズウイスキーも(特にマイクロディスティラリーは)これからのブランディングが重要になる局面のような気がしました。

トピック4: ウイスキーフェス

今年を振り返るにあたり忘れてはいけないところはウイスキーフェスに久々に参加できたことです(昨年のウイスキーヒストリー大阪はこっそり参加していました)。今年はウイスキーヒストリー大阪と百万石ウイスキーフェスタで、北陸ウイスキークラブとしてブースを出しました。特に私の主な活動地域である北陸での大規模なフェス開催は初めての経験で、私は運営側ではありませんでしたが、ブース設営には(他力本願でしたが)かなり力を入れさせていただきました。

当日は予想を遥かに超えた方が多く来てしまい、お目当てのボトルが飲めなかった方々には申し訳ありませんでした。この場をお借りしてお詫び申し上げます。素晴らしいボトルのほとんどは私自身が出品したものではありませんので、私がとやかく言う筋合いは無いのですが、おこがましくも彼らの肩を借りてひとこと述べさせていただきます。ウイスキーフェスはテイスティングの条件下としてはベストではないのですが、飲み手が集まる機会の一つとしては重要なものの一つと考えています。ウイスキーを通して人がつながることもあれば、人を通してウイスキーの素晴らしさを認識するというのも事実と思います。ウイスキーとそれに取り巻く人々の思いは表裏一体のように思うのです。ぜひ今回フェスで良いボトルを飲まれた方々は、このボトルを出していただいた方々の、ウイスキーを楽しんで飲んでほしいという心意気を買っていただき、今後ウイスキーをさらに楽しむきっかけにしていただければ、出展者冥利に尽きます。

私個人としては、フェスを通じて多くの人との交流があり、ウイスキーへのモチベーションが高まりました。ウイスキーを深く楽しむことの重要性を再認識しましたが、同時に周囲の人々の魅力にも気づかされました。今年は大阪と金沢で出店しましたが、来年の出店については未定です。プライベートでの仕事が多忙なため、フェス参加が簡単ではない状況ですが、機会があれば積極的に参加したいと思います。

ウイスキーフェスは全国各地で開催されるようになりました。これは良いことですが、出品者と参加者の両方にフェスが多くなったことで、「フェス疲れ」が見られるかもしれません。今後どのイベントも発展していって欲しいのですが、今後全国のフェスはゆっくりと多様化していき、それぞれ特色を持っていくことになるかもしれません。僕はなるべく参加できるように調整しながら、フェスが今後どのように発展していくのか、参加者側として見守りたいと思います。

トピック5: ジャパニーズウイスキー

ジャパニーズウイスキーに関しては私は語れるほど今年は飲んでいないのですが、京都のイベントで飲ませていただき、いろいろ考えさせることの多い年でもありました。

1つの大きなポイントは、2010年代後半に設立された日本のマイクロディスティラリーズが数年の熟成を経て、その熟成による変化が明らかになり始めていることです。これまでのジャパニーズウイスキーは正直情報が先行していましたが、実際にリリースされるようになり、冷静な評価が見られるようになりました。一部の新興の蒸留所からは、スコッチウイスキーに匹敵するレベルのボトルが登場しており、今後のリリースが楽しみな蒸留所もあります。近年、マイクロディスティラリーが増え、市場が盛り上がっているのは良いことです。ブームにより、質の高低にばらつきが出ますが、最終的には質の高い製品が文化として残ると思います。

しかし、良い製品だけでなく、ビジネスとしての存続が難しい製品も出てきています。残念ながら品質が良くても、プロモーションが上手くいかなければ市場での成功は難しいケースもあるわけで、これらの点については、見守るしかないと思います。

個人的には、特定の蒸留所に肩入れせず、さまざまな製品を試して、市場の成熟を楽しみにしています。年々クオリティが高まる現在の市場は、新しい発見に満ちており、今後も可能な範囲で試飲を続けたいと思います。


今年の心残りとして、自分なりにウイスキーの楽しみ方の違いを比較したり、ウイスキーを楽しむためのサービスを作ろうという計画がありましたが、実現できずに終わりました。来年はこの課題を引き続き取り組む予定です。誰かが始める必要があると感じているため、自らその一歩を踏み出そうと思っています。

また、地方都市にいながらも新リリースのウイスキーを多く試すことができた環境には大変感謝しています。新リリース以外のウイスキーも含め、様々な種類のウイスキーとの出会いに感謝し、今年のウイスキー体験を振り返ります。

今年はウイスキーに関する多くの経験と学びがありましたが、来年はさらにその楽しみ方を深め、新しい試みに挑戦する予定です。今このような議論ができる環境に感謝しながら、ウイスキーの世界をさらに探求していきたいと考えています。

今年飲んで印象に残ったニューリリースのボトル達

ここでは、原則今年のリリース(輸入の関係で多少前後することはあります)に絞って、今年印象に残ったボトルを上げていきます。先述の事情もあり、後半の方が多く飲んでいます。テイスティングコメントを書いていたものは書いておきます。

美味しかったボトル

グレンバーギー 1995 27年 トンプソンブラザーズ for ベイヤフルール

今年の後半はグレンバーギーの投稿は多かったように思います。私は昔から好きではありましたが、今回こんなにブレンバーギーの人気が出たことは意外でもあり、嬉しくもありといったところです。その中でも特に印象に残ったボトルを少しあげていきましょう。
98のバーギーはアイリッシュや往年のベンリアックのようなフルーツ、トロピカル系の味わいが際立ったボトルで、こんなリリースはなかなか珍しかったです。最後には樽感がまあまああ、トロピカル原理主義の方々には不服と思われるかもしれませんが、そういう点を差し引いても現在スコッチでどのようなトロピカルフレーバーがきれいに出ることはなかなか難しいです。98バーギーは昔から言わせてましたが、特に今回は良いリリースだったなあという風に思います。

本題のトンプソンブラザーズのグレンバーギー1995ですが、今年特に美味しかったです。似たようなラベルで3種類出ているようで、1つはアメリカ向けで飲んだことありませんが、2022年にリリースされたものと2023年のイタリア向けベイヤフルール向けのボトルは飲む機会がありました。
トロピカルとは少し違うのですが、70年代のブレンダーマスターズチョイスっぽいフルーツ感があり、中々驚かされたボトルでした。価格を考えなくてもかなり良いですが、価格帯を考えるとちょっと今の時代では信じられないクオリティで、何本か買ってしまいました。個人的にはベイヤフルール向けはかなりクオリティが高いです。

クラガンモア 1989 COD BAR PARKMORE 20th Anniversary

大阪・北新地のBAR PARKMOREの周年記念ボトル。この前売り切れましたが、本当素晴らしいボトルでした。 このボトルを詰めた高谷さんのコメントがすごくしっくりくるのですが、 往年のクラガンモアの味わいに、近年リリースのクオリティーの高い味わいにあるようなニュアンスが両立したようなクオリティーでした。タイミング的に手が届かなかったんですが、ちょっとびっくりする出来でした。

幸い近くのバーで飲めるので、ゆっくりと味わいたいと思います。

アードモア 1990 32年 57% リフィルバット / ハンターレイン オールド&レア for モルトヤマ10周年記念

モルトヤマさんが今年10周年とのことで、ボトルをガンガンリリースされていました。その中の1つのアードモアですが、かなりクオリティは高かったです。比較的年末のリリースで、まだまだ変化が大きくこれといったテイスティングが書けるほど飲んでいないのですが、ナッティ、カスタードクリームようなモルティなニュアンスに軽いピート感が下支えしていて中々良い。少し白い花やわずかにアジョワンのような清涼感。これからもいい方向に変わっていきそうという期待も高いボトルでした。

アイリッシュ 1988 33年 54.8% for Casky, House Welley, Soundwave, WhiskyLovers HK

このリリースもびっくりしました。香港のばーと愛好家向けのアイリッシュのようです。アイリッシュフリークでないので経験豊富ではないのですが、僕の知る88(のブッシュミルズ)の中でも特にフルーティーで完成度が高く、シャインマスカット、マスカットの種、ホイップクリーム、フィニッシュのタンニンもあるけどものすごく大味で分かりやすく美味しいボトルでした。若干76のアレっぽい感じもあるような気がします。

SCAPA 2003  19年 for THE WHISKY EXCHANGE

エクスチェンジのリリースは特に前半びっくりするボトルが多かった(後半があまり飲めていなかっただけかもしれない)ように思います。

こちらはなかなかレベルの高いスキャパで、オレンジ、すりおろしりんご、ココナッツオイル、バニラなどの味わい。かなり良いバーボン樽での熟成感が印象的でした。

SCAPA 22年 2000-2022

エクスチェンジやJISなども出ていましたが、このスキャパは特にすごかったです。バニラやオレンジオイル、ワックス、バタークッキー、ヘーゼルナッツ、ココナッツなどの多層的な香味があり、非常にできの良いボトルでした。

キルホーマン 100% ISLAY 2014-2023 for SHINANOYA

こちらボトルの写真を撮り忘れていますが、かなり良くてしっかり買ってしまったボトルです。(あ)こと秋本さんとシャムロックの前川さんがセレクトしたボトルです。100%アイラの麦芽感、フルーツ感もそうなんですが、ブリニーなニュアンスや丸みを帯びた柑橘や蜂蜜系のニュアンスが多層的に感じられます。個人的な勝手な思い込みですが、秋本さんの詰める一押しのボトルの中には、多層的な味わいが感じられるボトルが一定数あるような気がしていますが、その系譜の一つに入りそうなボトルと思っていました。価格を考えても良いリリースです。

グレンキース 1997 25年  RUDDER アートセッション クラシック

このボトル、毎回じゃないのですが桃感が出てくることがあります。90sキースってレモン系のものと桃やリンゴ系のものがあるとざっくり勝手に分類してますが、多くは前者のように思います。これは珍しく後者ですね。欲しかったボトルです。

ボウモア 2001 XOP for The Whisky Exchange

これは素晴らしいボウモアでした。古樽っぽいシェリー感とボウモアのニュアンスが混ざり合い、かなり高次元のボトルと感じました。アストンマーティンの96っぽいニュアンスで、ちょっと奥にトロピカルもいそうな感じ。ベリー感も出てきそうな気もする。飲みたてはまだチグハグなところもあったので、今後に期待するところもありますが、今飲んでも十分高次元でした。

ヘーゼルバーン 21年

香りはやや古めかしいシェリーカスクのニュアンス、ラズベリーやストロベリージャム、穏やかな落ち葉のようなピート、わずかにオレンジ、麦感は穏やか
飲むと香り通りのシェリー、染み入るようなピート感とやや固めのミネラル、わずかなウッディ、ローリエ
一体感のある、90年代バンクなどで経験したことのある、バンクの良いシェリー樽に似たようなニュアンスのあるシェリーカスク。一体感があり非常に飲み応えが高いヘーゼルバーンです。3月に札幌で飲ませてもらいました。最近はバンクがピーティさがやや強めものが多くなってきた印象がありますが、ヘーゼルバーンの妙なのか熟成年数の妙なのか、円熟みがあり、ベリー系のフルーツもありでなかなか良かったです。もう一度飲みたかったですね。

面白かったボトル・考えさせられたボトル

ベンネヴィス 1991 オールド・アンド・レア 日本向け

60年代の良いシェリーの味わいがなんとも魅力的なネヴィスでした。1991のネヴィスでは記憶が正しければメゾン向けかシグナトリーの何かのボトルで似たような古酒感を拾ったことはありますが、これはそれ以上の味わいで、今のリリースに出るのはかなり珍しいなと感じます。とある方が60年台ロングモーンと同様の香味と言っていたのは確かに頷けます。一方、僕個人としては全体的なか細さを感じ、スパイシーさも結構強めにあります。正直今はバランスが悪く、ネガティブなポイントもそれなりにあったりということで、正直言うと現時点で今年のベストと言い切れるような感想ではなかったのですが、今後の変化が気になり抱えたボトルでもあります。飲むタイミングが悪かったかもしれません。

オールド的な香味は、その香味に対するアンカリングがあり人によってだいぶ評価が違うんじゃないかと考えていますが、このボトルはまさしくその要素があるんじゃないかと思いました。つまり、往年の同様の香味をもつ伝説級のボトルをたくさん飲んで印象に残してきた人ほど、無意識にその印象を連想し、評価が(特定の香味がないボトルよりも)高くなるのではないかという仮説です(視覚や聴覚などではこのようなアンカリング効果があることがわかっています)。ということで、往年のボトルをたくさん飲んでいて、往年のレジェンドボトルの良さをしっかりと記憶に焼き付けている人で、現行もある程度飲んでいる人ほど評価が高くなりやすいボトルなのではないかと感じたりします。そういう意味で、人により評価が変わりやすいボトルなのかなと思いました。

マストハウスウイスキー

近年蒸留ですがとんでもなくフルーティーで、一目置きたくなるボトルでした。ペンダーリンなどもありますが、雑に飲むならこういうタイプのボトルもあってもいいよねと思わされます。ライトなフルーツ感のあるボトルは、スコットランド以外では結構これからも出てきそうです。

ストラスアイラ 15年 蒸留所限定

これはかなりびっくりしたボトル。古酒感とは違いますが、昔のシェリー感とあまり遜色はなく、こういうレベルは蒸留所限定レベルで普通にリリースされる時代なのかと感心しました。

カリラ 2012 トンプソンブラザーズ for ロイヤルマイルウイスキー

ロイヤルマイル向けのトンプソンブラザーズのカリラ。このボトルが美味しいというよりは、2011-2012年以降蒸留のカリラは、それまでのカリラとだいぶ味わいが変わってきたような気がします。それを強く気づかせてくれたボトルです。

スキャパ 1985 G&M プライベートコレクション for 信濃屋 & ウイスキーヒストリー大阪 2023

このスキャパ、先にあげたスキャパとはだいぶ違う系統で、80ー90年代あたりにあるオフィシャルにあった、渋皮のようなえぐみを伴うナッティなニュアンスがしっかりと感じられる。その上で長熟の良いフルーティーさもしっかり感じられました。2000年以降のスキャパも美味しいですが、こういう当時のハウススタイルの系譜をしっかりと組んだ上で一つ上のクオリティが出るボトルという点でなかなか面白いボトルでした。

ダルユーイン 1997 シグナトリー for ウイスキーフープ

フープの11月半ぷのダルユーイン。24年ですが度数落ちの影響が強く、いわゆるピアレス系の系譜を踏む、調熟度数落ち系の飲みやすいボトル。特筆すべきはその飲みやすさで、ネガティブなニュアンスがほぼないんですよね。最近はこういうボトルは減りましたが、たとえばT&T TOYAMAか一昔前にリリースした92リンクウッドとかの系統に近いです。

グレンエルギン 2007 14年 56.9% ファーストフィルシェリーホグスヘッド / GM コニサーズチョイス for モルトヤマ10周年記念

モルトヤマがリリースしたボトルの中で、個人的に一番ストックしたかったのがこのエルギン(といいながらそんな買えてないんですが)。一目置きたくなるシェリー感と原酒の良さの一体感が良く、過去のリリースを振り返ってもかなり個人的なツボに入るボトルの一つでした。

グレンロッシー 2009 12年 オールドパティキュラー

香りは白桃や金柑、モナカ、粉砂糖。飲むと淡い麦感に白桃、金柑、ホワイトペッパー、ハネデューメロン、洋梨。余韻に洋梨と金柑のフルーティーなニュアンスが長く伸びる。

金柑系の香味が印象的なフルーティーなロッシーで、普通のボトルですがかなりいいボトルでした。知人の話では09ロッシーの加水は他のも結構似たニュアンスがあるとのことで、今後も要注目のビンテージと言えそうです。

その他

いろいろ飲ませてもらいました。写真に撮っていないのも結構飲ませてもらっていますが、とりあえずぱっと見つかった写真をピックアップ。上に上げていないボトルでもいいボトルは多く、平均的なクオリティは確実に上がっている印象です。

あと上には上げませんでしたが、ラフ25年なんかも結構良かったです。

最後に

今年のボトルを改めて振り返ると、

  • Irish 1988 33years old 54.8% for Casky, House Welley, Soundwave, WhiskyLovers HK
  • Bowmore 2001 51.6% Xtra Old Particular for the Whisky Exchange
  • Glenburgie 1995 52.3% Thompson Brothers bottled exclusively for Beija Flor
  • Cragganmore 1989 32yo Cask of Distinction refill American Oak 50.9% 

この4本は特に良かったなと思いました。

来年もたくさんのボトルと人々に出会えればと思います。私事で年初めはあまり活動できませんが、可能な限り楽しんでいきたいと思います。

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