最近のモルトヤマPBを飲みました

スペイサイド
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最近、ひょんな事からモルトヤマPBのボトルサンプルをいただく機会がありました。

せっかくなんでボトルごとの感想を記載したいと思います。こちら詳細はポッドキャストでも話す予定ですので、そちらもぜひ楽しみにしていただきたいのですが、とりあえず自分のテイスティングノート、評価、考察を書くことにしました。

ボトル一本ごとに書いても良いのですが、今回は3つ一度に記載することにしました。

各ボトルのテイスティング

グレンゴイン 2008 モルトヤマ向け

【テイスティングノート】

  • 香り: 黄色い花、フルーツゼリー、バニラ。奥から少し香ばしさを感じる麦、ピリッとしたアルコールの刺激、オレンジオイル、青肉メロン、スーパーで売っているメーカー製のモンブランケーキ。
  • 味わい: 香り通りの華やかなオレンジや黄色い花のニュアンス、バニラ感、アーモンドチョコ。少し遅れて、やや渋みを感じるウッディさと粉っぽさ。
  • 余韻: ややウッディさとバニラのニュアンスが目立つが、嫌味を感じるレベルではない。

【評価】 A+ 〜 A++

【考察】 トップノートの、バニラを伴う黄色い花のようなニュアンスはとても素晴らしく、これだけで市場に出る価値のあるボトルだと思われます。手持ちのボトルで言うと、1990年代前半にケイデンヘッドからリリースされていたグレングラントや、ウイスキーフープのだいぶ前に出た1995のグレンカダム、またモルトヤマ、キャンベル、シャムロックのジョイントであったグレンカダム、直近で例えるなら2004年などのハンドフィル(蒸溜所限定)で出ていたバーボンカスクタイプのグレンゴインを少し思い出させるような、とろっとしたバーボンカスクの味わいです。

一方で、飲んだときのウッディさは少し気になるところかもしれませんが、経年で和らいでいくタイプの可能性も十分にあり、あまり嫌味に主張していない点には注意すべきでしょう。いわゆる「硬さ」を若干感じるものの、熟成感も十分にあるため、今すぐにでも飲み進められるという、少し不思議な経験をさせられました。

総合して、今飲んでも美味しいですが、かなりのポテンシャルを秘めています。ただ、ただし、アルコール感は少なからずあるので、特にオールドボトルを加水して飲むのをメインにしている方は、アルコール感を強く拾ってしまうかもしれません。そういう意味で、やや飲み手の好みが試される側面もあり、評価が安定しにくいボトルです。個人的にはA++を付けたいのですが、もう少しウッディさが落ち着いてくれれば文句なし、と感じてしまいます(おそらくサンプルでは落ち着いていたのでしょう)。非常に美味しく、一気に飲んでしまいました。


グレンファークラス 2009 ファーストフィル・シェリー オフィシャル(Bar Mother’s30周年記念ボトル、京都Fine Wine and Spirits、モルトヤマ向け)

【テイスティングノート】

  • 香り: プルーン、フルーツミックスのドライフルーツ、ミルクチョコレート、ワイン漬けにした洋梨、なめし革、シナモンやクローブといった土っぽいニュアンスを伴うスパイス、甘納豆、わずかにクレゾール。
  • 味わい: 基本的にはどっしりとした良質なスパニッシュオークのニュアンス。香り通りのプルーン系の果実感、甘納豆、ダーク系の板チョコ、シナモンの入ったホットワイン。
  • 余韻: 温かいスパイシーさと程良いウッディさ、プルーンやデーツなどのどっしりとしたフルーツ感が長く続く。

【評価】 S

【背景と考察】 金沢のバー「マザーズ」の30周年を記念してリリースされたボトルです。31周年を迎えられているので少し遅れてのリリースとなったようですが、改めて30周年おめでとうございます。何を隠そう、私のシングルモルト人生を良い意味で狂わせたのは、マザーズさんであり、マスターの髙橋さんです。大学生の時に同級生に誘われてマザーズに行かなければ、こんなにウイスキーを飲むことも、ウイスキーに関する活動をすることもなかったでしょう。ウイスキー以外にも、スピリッツやビールなど様々なお酒を教えていただき、現在進行形でお世話になっています。私がモルトを飲み始めた十数年前、北陸新幹線もまだ開通していない中、マスターが足しげく東京に通い、キャンベルタウンロッホなどでモルトの勉強をされていた頃を思い出しながら飲むと、感慨深いものがあります。

ボトルの評価に関しては、そういった前情報を抜きにして行っているつもりです。むしろ身内に近いので、評価は厳しくなるバイアスがあるかもしれません。

その中でもこのグレンファークラスは非常に出来が良く、良質なスパニッシュシェリーのファークラスとして文句のない仕上がりだと思います。ネガティブな要素がほぼなく、深みも比較的あるため、私の中では評価Sです。

評価が分かれるとすれば、フィニッシュのスパイシーさが若干伸びる点をどう捉えるかでしょう。しかし、詰め立てでこれであれば充分合格点ですし、ウッディ感が強すぎるわけではありません。このボトルを評価しないのであれば、近年の良質なスパニッシュオークのシェリー感を評価しないと言い切っても良いくらい、スパニッシュオーク・シェリーの王道を行く味わいです。出所を知らずに飲んでも、日本の有名インポーターやボトラーが満を持してリリースしたと言われても遜色ないでしょう。

改めて、30周年おめでとうございます。今後も長きにわたり金沢を代表するバーでいてほしいと心より願っております。


追記:その後Mother’sで開けたてのボトルを飲みました。若干スパイシーさが目立っていたので、この状態だとA++評価ですが、それを勘定しても良いリリースでした。

グレンギリー 2011 11年 60.1% バレル / キングスバリー for モルトヤマ

【テイスティングノート】

  • 香り: 金柑やビワ、若干ケミカルなニュアンス、バニラ、オレンジ。長い時間置いておくと麦感、陳皮などの漢方のニュアンスが出てくる。
  • 味わい: 香り通りの金柑や、若干ケミカルさを伴うフルーティーなフレーバー。オレンジ、バニラ、やや収斂味を伴うスパイシーさ、陳皮などの漢方のニュアンス。
  • 余韻: スパイシーさが強いが、甘みも舌に強く残る。

【評価】 A++

【考察】 非常に面白いニュアンスを伴うボトルで、開栓して置いておくと、とんでもなくフルーティーになりそうなポテンシャルを感じます。少し独特なケミカルさや漢方っぽいニュアンスはありますが、この漢方っぽさ(私は陳皮と表現しました)は、植物の皮や葉を乾燥させてすり潰したときのような、渋みも含んだニュアンスと捉えるとイメージしやすいかと思います。

興味深いのは、この少しあざとさのあるフルーティーさや甘みです。これは私が好きなボトルの1つである、OMCの15周年向けとしてリリースされた「グレンギリー 1993」の香味に近いものを感じます。こちら、当時、私たちの周りでは非常に評判が良く、安価だったため購入した方も多かったボトルです。片や20数年の熟成、こちらは11年という違いはありますが、その頃から共通する香味の要素がハウススタイルとして現在も継承されている点は非常に勉強になります。むしろ90年代よりも、このハウススタイルの香味はかなり強くなっているように感じます。熟成期間が短い分、より香味を強く感じるだけかもしれませんが、実際問題として強く感じることは確かです。

そして、熟成感が非常にちょうど良く、嫌な樽感などがないのも素晴らしい点です。しっかりと骨太なグレンギリーの香味が得られるボトルとして、ここまで輪郭がはっきりしたものはなかなかないのではないでしょうか。という意味で面白いボトルでした。

おわりに

思った以上に良質なリリースが多かったです。Podcastでは上記の感想をもとに、ちょっと違う視点でお話しをしたいと思います。

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