96ベンネヴィスより96らしい?近年の96ベンネヴィスのフルーツ、ケミカル感にこなれた麦感が相まってちょっとびっくりするボトル。
ボトルスペック
生産地域:ハイランド
蒸留所名:ベンネヴィス
オフィシャル/ボトラー名:ザ・シングルカスク
樽の種類:不明
カスクナンバー:BN95A
蒸留年:1995
熟成年数:22年
ボトリング年:2017
アウトターン:60本
Resion | Highland |
Distillery | Ben Nevis distillery |
Official / Botter | The Single Cask |
Bland | The Single Cask |
Batch / Cask no. | BN95A |
Filled | 1995 |
Bottled (YYYY.MM.DD) | 2017 |
Matured years | 22 years |
Cask type | unknown |
Alc. % | 44.7% |
O/T | 60 bottles |
解説
ボトラーでありブローカーである、THE SINGLE CASK 社よりリリースされたベンネヴィス1995年。同社はあまり見かけることのないボトラーですが、どうやらブローカーとしても活動しているようであり、ボトラー業をされている方はお世話になっている業者なのかもしれません。
ベンネヴィスは1989年にニッカウイスキーが取得し、現在に至ります。「生産量の最大75%がニューメイクとして日本に出荷されており、ブラックニッカなどに使われている」とMALT WHISKY YEARBOOKに明記されている通り、ニッカウイスキーのリリースには相当量のベンネヴィスが使われていることがわかっています。ジャパニーズウイスキーの議論はここではしませんが、有名な話ではあります。そういえば昨年ベンネヴィス移転やら休止の噂がありましたが、飛ばし記事だったようですね(こちらもMALT WHISKY YEARBOOK2020に記載されています)。
少し前のベンネヴィスというと、少し草っぽいニュアンスを帯びたボトルが多い印象でしたが、90年代のベンネヴィスはだいぶ雰囲気が変わり、フルーティなものが多いように思います。ここ数年ボトラーズから1996年ビンテージのベンネヴィスのリリースが多いですが、どれもケミカルさやトロピカルなニュアンスを帯びており、フルーティが好きな方々には受け入れられている印象です。最近だとメゾン向けの1996オフィシャルが有名になったり、96ビンテージではないですがベンネヴィス10年のシングルカスクが話題になったりと、少しずつ日本でもオフィシャルが話題になってきているのかなと感じます。
感想
さて、このボトルですがちょっとびっくりする、意外なリリースでした。というのも95ベンネヴィスをあまり飲んでいなかったのもあるのですが、96のそれよりもトロピカルな要素がしっかりしており、また熟成によるものか麦感がこなれていて、少しワクシーなニュアンスを時折感じます。このあたりのフルーツやトロピカルに目がないマスターが言うには「元々他のボトルでも、96よりも95の方がフルーツ感は強いと思っている」と仰っており、このボトルに限った話ではなさそうです。
例えば1976のトマーティンなどが特にそうだと思うのですが、いわゆるグレートビンテージの特徴的な香味はその前後のビンテージにも共通項があることは多いと思います。またボトラーズは卸されるビンテージにムラがあることが多く、ウイスキーのように熟成期間が長いものだと買ってからグレートヴィンテージが発見されるまでに数年単位のタイムラグがあります。ボトラーが美味い樽だけを入荷するという買い方は現実的ではなく、ドリンカーは偶々市場に出てるものだけでそのビンテージの良し悪しを判断しないといけません。96ビンテージが偶々ボトラーズへの流通が多いので、良いボトルが多いと良ビンテージと判断する事はできても、前後のビンテージよりも求める香味が強いかどうかまでは不明なわけです。例えばトマーティンなら76よりも76前後のビンテージの方が実はフルーティーなんじゃないかという噂もありました。
ベンネヴィスに関して言うならば、このボトルを飲んでからはベンネヴィスは96より95の方がよりフルーティーなのかもしれないと思うようになりました。
このボトルの良いところは単純にフルーティー一辺倒ではなく、麦の厚みが多分に感じられ、ワクシーさやこなれた麦のニュアンスがとても分かりやすいです。70-80年代蒸留、90年代ボトリングのマキロップチョイスやグリーンケイデンあたりのプレーンカスクを今飲むとあるようなこなれ感があるんですよね。一体感も感じ、意外性も強く楽しめるボトルでした。
アウトターンが60本と少なく、市場からはもう無くなっていますが、フルーティーなモルトが好きな方は一度飲んでみてはいかがでしょうか。酸味が強い人は苦手かもしれませんが是非。
評価
評価:A++
テイスティングコメント
香りはマンゴー、レモングラス、リッチな麦感、みずみずしいキュウリ、ワクシー、生ハム
飲むと香り通りのトロピカル、少しケミカル、レモンのチューイングキャンディ、ワクシー、枯れ感のある麦、塩気の強い生ハム、樽のタンニン。余韻はスパイシーでリッチ。
結局何が言いたかったのか
有名ビンテージは存在するが、その前後のビンテージやぜんぜん違う年代に共通したニュアンスがあることもあるし、有名ビンテージにこだわりすぎる必要は必ずしものない。そういうものに出会えたときや気づけたとき、ウイスキーを飲むのがちょっと楽しくなります。
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