T&T TOYAMAのジャパニーズウイスキーボトラーズ事業について、下野さんに聞いてみました(後編)

インタビュー
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4月に国内初のジャパニーズウイスキーのボトラーズ事業を発表し、記事発表当時もクラウドファンディングを実施しているT&T TOYAMA。前半に引き続き、下野さんとのインタビューの続きを掲載します。

後半は、ボトラーズウイスキーの将来や、私のようなスコッチ好きの人に向けて、ジャパニーズウイスキーを楽しんで欲しいかを伺いました。

https://camp-fire.jp/projects/view/403368

前編は下のリンクよりどうぞ。

将来的には、T&T TOYAMAはボトラーズのプラットフォームみたいな存在になればいいと思うんです

MK
MK

YouTubeの生放送では、今後新しいボトラーズも日本に出てきて欲しいという話をされていました。今後ボトラーズが多くなると、どんなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

下野 孔明氏
下野 孔明氏

そもそも日本にボトラーズという存在はなく、スコットランドなどをみるとウイスキー産業がますます発展していくために必要な存在だと思います。将来的には僕らだけでは、全体の需要を満たすことに限界はあると思います。

将来的に、しっかりとした審美眼を持ち、適切に市場に供給できる酒屋などのリテーラーが参入してくれるようになれば、それぞれの審美眼で、さまざまな熟成年数で熟成されることや、違う樽を使ったりなど、いろんな熟成環境でジャパニーズウイスキーがリリースされるようになります。それにより我々だけではない多様性が生まれるので、消費者の方々にもさまざまな視点を知ってもらえるようになると思います。そういうことができれば、ジャパニーズウイスキーのボトラーズ事業が国内外問わず発展していくと感じます。なので、僕らをプラットフォームに樽の熟成やボトリングなどのサービスを提供することで、ウイスキー業界が盛り上がればいいなと思っています

熟成庫の規模は、大手を除けば大きい方です

今回の熟成庫は、3000丁(3000樽)という大きさですが、これはどの程度の大きさなのでしょうか。参考になるものがあれば教えて欲しいのですが。

はっきりとした答えは持ち合わせていないのですが、日本国内で言えば、大手3社の蒸留所を除けばかなり大きい方だと思います。3000としていますが、組み方を工夫すればもう少し樽が入りそうです。

海外のボトラーズと比べて、この規模感はどうなのでしょうか。

海外のボトラーズは規模も大きいですし、蒸留所を持っているために正確な数字は出せなさそうです。今回の熟成庫も、樽熟成スペースを貸し出す事業も兼ねていますので、全てが全てボトラーズに用いるわけではありません。

資料を出しますので少々お待ちください。

海外のボトラーの収容数は、例えばハンターレインが15000樽収容可能という記事がありましたね。これも樽熟成スペースの貸出をしているようです。

https://www.heraldscotland.com/business_hq/13179983.hunter-laing-invests-huge-whisky-warehouse/

スコットランドの市場規模で15000となると、スタートアップとしての熟成庫の大きさとしては、当初想像していた以上に大規模だということが少し実感できたような気がします。

ラック式1とダンネージ式2を組み合わせた独自の積み方での熟成で、通常の蒸留所より樽収容数はかなり多くなりますね。また、樽の保管に特化してベストな状態で熟成できるように屋根から壁材まで検討をかさねていますので、素晴らしい熟成環境が実現できると思います。

単なる規模の大きさだけではなく、熟成環境にもこだわったのですね。

コアなウイスキーファンにもジャパニーズウイスキーの良さを感じてもらえるようなリリースもできたら良い

おそらくこのブログを見てくれている人や、僕なんかもそうなんですが、下野さんが今までモルトヤマで販売していた飲み手は、スコッチウイスキーが好きな人たちが大半だと思います。このスコッチ好きな人に対して、日本初のボトラーズとしてお伝えしたいことはどんなことでしょうか。

モルトヤマを利用してくださっているお客様は、商品のラインナップ上、スコッチのボトラーズ好きな人が多いです。モルトヤマを利用してくださっている人、という区切りではないのですが、スコッチのボトラーズを沢山飲まれてきた経験値の高い飲み手の方々には、まだジャパニーズウイスキーが響いてきていないという方もいると思います。

ジャパニーズを飲むなら同じ価格でスコッチが買えるとか、大手以外は…と仰られる方もいらっしゃいますね。

その意見がどうこうというわけでないですし、実際マニアックなスペックのリリースは、日本ではあまり出てきて来なかったですし今までマニアックにウイスキーを飲まれていた方々は、過去の小規模蒸留所のウイスキーを高く評価しない方もいらっしゃいましたその認識が正しいかどうかという議論をしたいわけではないのですが、実際コアなウイスキーファンの方々には心に刺さったものが決して多くはなかったと思います。

今これからはしっかりとした作りで、高いクオリティの樽を用いて、しっかりと丁寧に熟成をさせることで、スコッチに負けないウイスキーが出せるということを今後提示できるようになればいいなと思います。スコッチと比較して同等のクオリティになるかもしれませんし、場合によってはスコッチを超えるかもしれない。そういうコアなドリンカーも納得できるようなクオリティの高いウイスキーができることを、ボトラーズで今後示せるようになればいいなと思っています。そうなればスコッチの長所やジャパニーズの長所を比較できるようになり、コアなウイスキードリンカーもよりウイスキーを楽しめるようになるのではと思います。

最後に、ウイスキー好きの皆さんに一言をお願いします。

最初にお話ししたように、現状として、ジャパニーズウイスキー必ずしも全てがその味の良さや独自の魅力で選ばれているとは言えない状況で、飲んで楽しむこととは別のことを目的に追い求めている方も少なくないと思います。 

だからこそ、我々のリリースや熟成庫の見学、各種発信を通して、「どの蒸留所をどのような樽で、どれくらいの期間熟成させたらどうなるのか」や「蒸留所のハウススタイルとは何なのか」、そして「本当のジャパニーズウイスキーの良さや魅力は何なのかとということを、我々とともに探求しながら、楽しんでいただけるジャパニーズウイスキーファンを増やしていければと思っています。

ありがとうございました。

改めて下野さん、丁寧にお話いただいてありがとうございました!

自分自身、このボトラーズ事業について知っていたつもりでしたが、知らなかったことがたくさんあるなと思い知らされました。。。

下野さんと稲垣さんのプロジェクト、T&T TOYAMAのジャパニーズボトラーズ事業のクラウドファンディングは下からどうぞ。

https://camp-fire.jp/projects/view/403368

もちろん自分も応援しています。

ぜひ、皆さんからも応援よろしくお願いします。

脚注

  1. ラック式とは、ラックに樽を置いて熟成する方法。ラックを使用することで積み重ねることが可能になり、管理も用意になる。大規模の熟成庫でよく用いられる。大手の蒸留所はラック式が多い。
  2. ラックを用いずに樽を横にして、木の板で積み重ねていく熟成手法はダンネージ式と言われる。ダンネージ式は伝統的な熟成方法である。一般的にラック式より湿度が高いと言われる。一長一短あり、また熟成環境は置き場所でも異なる事から、一概にどちらが良いというわけではないと言われている。

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