T&T TOYAMAのジャパニーズウイスキーボトラーズ事業について、下野さんに聞いてみました(前編)

インタビュー
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4月に国内初のジャパニーズウイスキーのボトラーズ事業を発表し、記事発表当時もクラウドファンディングを実施しているT&T TOYAMA。たまたまお二方と交流があったのもあり、今回はT&T TOYAMA、モルトヤマの下野孔明(ただあき)氏とオンラインでお話しする機会がありましたので、今回は改まってインタビューを行うことにしました。

T&T TOYAMAのクラウドファンディングについての詳細は、以下のリンクをご覧ください。T&T TOYAMAについての説明も以下のクラウドファンディングのページを参照ください。

https://camp-fire.jp/projects/view/403368

1時間半にもわたってお話しいただき、熱い思いを沢山語っていただきました。ボリュームがありますので前後編に分けて投稿いたしますが、ぜひお読みください。

前半はジャパニーズウイスキーにおけるボトラーズ事業の立ち位置について、下野さんの考えることを教えていただきました。

ボトラーズ事業で、ジャパニーズウイスキーの文化をさらに根付かせていきたい

MK
MK

クラウドファンディングでは目標金額1000万円という金額に対し、30分という驚異的なスピードでの目標達成1となりました。お祝い申し上げます。

下野 孔明氏
下野 孔明氏

ありがとうございます。これだけ多くの方に支援いただいていることに大変感謝しております。

このようなスピードでの目標達成について、率直な気持ちを教えてください。

本当にありがたいという言葉に尽きるのですが、感謝の意以外で申し上げるとするならば、ジャパニーズウイスキーに対する期待がとても高まっているということを改めて実感しました。

ここ数年でのジャパニーズウイスキーはブーム的な側面もあるのではと感じることがあります。この状態がずっと続くわけではなく、いつか冷静に見られてしまう時期があるように思います。

そういうご意見もあると思います。だからこそ、独自に原酒の仕上がりを見極めて、熟成のピークに達したと思われるものを、シングルカスクのカスクストレングスとしてリリースするボトラーズ事業は、ジャパニーズウイスキーの真価を、よりコアな消費者の皆さんに見極めて頂くためにも、重要な事業だと考えています。

80年代も、状況は現在とは違いますが、地ウイスキーブームというウイスキーが過熱した時期があり、地方に多くの蒸留所ができたという経緯がありました2。その後焼酎にとって変わられ、ウイスキーの生産量は大きく低迷することになったかと思います。

現在がブームの最中にいるとすれば、過去のようにならないためにはどう動くべきなのでしょうか。

今のジャパニーズウイスキーは一過性のブームのような形だけで終わるものではなく、将来的に、ウイスキーの味自体が評価される時代が来ると思っています。

もし仮に今がブームであったとしても、今後、文化や産業として本当の意味で日本に根付くように、T&T TOYAMAが国内外にハイクオリティの商品をリリースすることにより魅力を発信し、ご協力いただいている日本のクラフト蒸留所やジャパニーズウイスキーの知名度を高め、ファンを増やし、ジャパニーズウイスキー界を盛り上げていくことが、我々の使命であると考えています。 

蒸留所とボトラーズは、密接な関係になると思う

今まで本格的なジャパニーズウイスキーのボトラーズは、なぜなかったのでしょうか。

ジャパニーズウイスキーは、今までは大手がメインストリームでした。

大手は販路と資本力があるため、樽をたくさん抱えたり、違う味わいの原酒を何種類も作りブレンドされた製品を自らの販路を使って販売することができました。資本力があれば自己完結ができるので、基本的にボトラーズ事業が存在する必要性が出てこなかった、ということでしょう。

クラウドファンディングの紹介ページやYouTubeの生放送では、ボトラーズの存在により、ウイスキー不況下でも蒸留所に安定した販売先ができるというメリットや、オフィシャルのリリースとはまた異なった魅力が伝えられるとお話しされていました。

はい。その他にも様々なものがあります。

例えばシングルカスクでのリリースや、オフィシャルでは通常使わない樽でのリリースは、蒸留所の新たな一面を開拓することににつながります。例えばスコットランド大手のボトラーであるゴードン&マクファイルでは、蒸留所限定ラベルというものを安定してリリースし、蒸留所の個性を発信し続ける存在でありました。

確かに、ゴードン&マクファイルの蒸留所ラベル3に代表される一部のブランドは、ボトラーの側面から蒸留所のハウススタイル4を提示してくれるものもありましたね。

それに、ボトラーズの事業というものは蒸留所からボトラーズへの一方通行とも限りません。

時には蒸留所と意見交換をしたり、消費者の方や私の経験値を元に味わいのフィードバックができることもあります。製造技術の面では三郎丸蒸留所の稲垣さんとも関わっていますし、ボトラーズを通してお互いにリリースするウイスキーの質の向上に寄与できると考えています。

想像していたものよりも、蒸留所とは相互的で密接な関係になるのですね。

そうですね。そのようなコミュニケーションをとり続けることで、その蒸留所の味わいの個性を消費者に伝え続けることができると思います。オフィシャルでは伝わりにくい客層の方にもご評価いただけるような役割でいたいなと。

ウイスキー事業はどうしても初期投資がかかる事業です

相補的なフィードバックができるという点で、お二人がこの事業を始めるのに適任だと改めて感じるように思いました。このボトラーズ事業、Campfireにも書かれていましたが下野さんが人生をかけてのチャレンジということでした。日本で初めてと考えると、正直な話採算性がある事業なのかと思われる方もいるかと思うのですが、もちろん無謀なチャレンジではないんですよね?

もちろん長期的な視点で採算が取れるように計画しています(笑)。ウイスキーは資金を投入してから回収されるまでに時間がかかる事業なので、初期投資にかなりの金額がかかります。しかしながら最初の資本が十分に用意され、リスクを分散することができれば非現実的な話ではありませんその意味でメーカーがすべてのリスクを負う、現状の日本のウイスキーの産業構造のままでは、長期的な視点から見ると継続的な発展には困難を伴うと思われます。

クラウドファンディングの3000万円という金額も、ボトラーズ事業の前には大きな金額ではないのですね。

もちろんクラウドファンディングはとてもありがたいことで、資金協力や応援をいただいていることは本当に励みになります。しかし、初期投資はおおよそ2億円を超える予定であり、原酒や樽の購入額も、軌道に乗ると年間2000万円を予定しています。クラウドファンディングはこれで全て賄えるというわけではなく、一部に使わせていただくという形になっています。

これだけの規模でやりますので、きちんと事業計画を立てて、蒸留所と長期的な信頼関係を築いていきたいと考えています。

資本面のみならず時間の意味でも、人生をかけてのチャレンジなのですね。

後半では、熟成庫についてや、将来の展望など、ジャパニーズウイスキーの夢が詰まった話をたくさんいただきました。

後半も楽しみにしてください。

T&T TOYAMAのクラウドファンディングについての詳細は、以下のリンクをご覧ください。

T&T TOYAMAとは何か?知りたい人も以下のクラウドファンディングのページを参照してください。

https://camp-fire.jp/projects/view/403368

後半の記事はこちらからどうぞ。

脚注

  1. 現在ネクストゴール3500万円を目標に応募されています
  2. 当ブログ参照
  3. G&Mがリリースしている、シングルカスクではないリリースのひとつ。例えばこのロングモーンなどが該当する。現在も多くの種類がリリースされているが、過去にはスミスズグレンリベットやグレングラント、ストラスアイラなどさらにたくさんの種類がリリースされていた。
  4. 一般的にはその蒸留所に特徴的な味わいを指す。実際には、「80年代のボウモアは~」など、蒸留所の味わいは年代ごとに異なることを考慮し、蒸留所と年代を合わせた意味で用いられることもある。

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