キルホーマン アイラフェス2021年リリース 56.3%

アイラ
この記事は約6分で読めます。
https://www.kilchomandistillery.com/distillery-news/feis-ile-2021/ より引用

ボトルスペック

生産地域:アイラ
蒸留所名:キルホーマン
オフィシャル/ボトラー名:オフィシャル
樽の種類:ヴァッティング
カスクナンバー:27/2012, 711/2012, 712/2012, 713/2012, 714/2012, 718/2012 – Ex Buffalo Trace bourbon barrels, 94/2011, 151/2011 -Ex Miguel Martin Oloroso Sherry Butts
蒸留年:2011, 2012
熟成年数:
ボトリング年:2021

Kilchoman distillery Fèis ìle 2021, single farm
bottler: Official
56.3%
27/2012, 711/2012, 712/2012, 713/2012, 714/2012 and 718/2012 – Ex Buffalo Trace bourbon barrels,

94/2011 and 151/2011 -Ex Miguel Martin Oloroso Sherry Butts
O/T: 2832 bottles

解説

ウイスキーの聖地ともいわれるアイラ島。ピーティーなウイスキーを作るそのアイラ島の西部に、2005年アンソニー・ウィルズによって設立されたキルホーマン蒸留所。アイラ島ではアードナホーが設立されるまで新設蒸留所として期待されていた同蒸留所。規模はアイラ島の蒸留所でも最も小規模なのですが、ファームディスティラリーと呼ばれる農場併設で、自身で精麦まで行っている蒸留所です。

キルホーマンのスローガンはfarm to glass。これは自社の農場で作ったモルトでもウイスキーを生産するという、ウイスキーに対するこだわりを指しています。これは200年前のアイラでは、島にあった農場が小規模な蒸留所を作り、そこでウイスキーを製作していたことに由来します。現在ディアジオのポートエレン精麦所からも麦芽を購入ており、自社農場で作成した麦芽とともに蒸留しています。当然麦芽が異なれば発酵手法も異なります。アランのように独立資本のため、基本的にシングルモルトのみをリリースしており、ボトラーズへの払い出しがほとんどないのも特筆すべき蒸留所でしょう。ここ数年人気は上がっている印象で、2019年春には同様の施設を有した第二蒸留所を設立しています。

香川県高松市のバーshamrockの前川氏はキルホーマンアンバサダーに就任され、最近は前川氏がセレクトしたSTRカスクがリリースされました。これもかなり良いボトルでしたので、機会がありましたらここでも紹介できたらいいなと思っています。

考察

さて、例年であれば4月~5月はアイラ島でのウイスキー祭、アイラフェスが行われる時期ですが、コロナ禍のこのご時世、2年連続でアイラフェスは中止となってしまいました。キルホーマンはYoutubeでオンラインテイスティング会を行うとともに、アイラフェス向けの限定ボトルをリリースしました。

スペックに記載した通り、バーボンバレル6樽、シェリーバット2樽の計8樽のバッティングで、結構なアウトターンで、一人1本までの購入制限があったことから、数日は売れ残っていたのではないでしょうか。チェックしていた人は購入できたと思います。複数抱えられなかったのは残念ですが、無事に購入し飲むこともできたのはありがたい売り方でした。

さて、このボトルをスペック的に見たとき、大きく2つの特徴があります。

一つはSingle Farmの表記があること。つまり100%アイラと同じく、自社農場で精麦したもののみを使用していることがわかります。Single Farmのキルホーマンは最近少しずつリリースされていますが、最近のリリースで特に印象的だったのはウイスクイー20周年記念のキルホーマン。シングルカスクで20ppmでしたが、印象的なリリースでした。後述しますがこのアイラフェス向けにも共通項があります。

もう一つは樽使い。キルホーマンの限定リリースでは、シェリーとバーボンのバッティングでリリースされていることが多いです。キルホーマンサイドの意図としては、端的にまとめると「短熟で複雑さを出すため」のようですが、このバッティングの妙がこのボトルの完成度をさらに高めているように思います。

このボトル、飲み始めはまあまあ固く上手く香味が拾えなかったのですが、30分ほどの放置でどんどんいろんな味わいが出てきます。通常、こういうボトルは少量加水するといろんな味わいが出るものなのですが、このボトルは例外のようで、加水すると味わいがバラバラでピンボケしましたので、時間経過で拾っていった方が良い様に思いました。

まず特筆すべきなのはこの麦感。厚みのあるこの麦感は例えばスプリングバンクのローカルバーレイやラフロイグのバイセンテナリーのカーディスにあるような、100%フロアモルティングで感じる麦感が共通して感じられました。ウイスクイー20周年のキルホーマンとも共通する香味であり、個人的にはSingle Farmのキルホーマンで出したい味わいの一つはこの麦感なのだろうとも感じました。もしかしたら今後の100%アイラの方向性もこういうものになるのかもしれません。希望的観測ですが、こんな麦感が出てくるリリースが恒常的に出てくるならかなり喜ばしいことと個人的には思います。

こういう麦感って経年変化でトロピカルに近いフルーツ感が出てくることが多いと聞いたことや経験したことがありますし、このボトルもそのような経験変化が楽しみです。

味わいも100%アイラに代表されるバーボンバレルのSingle Farmのキルホーマンは、個人的にはやや繊細で厚みがあまりないと感じることがありました。繊細だからこそいろんな香味が拾えるし、そこが良いところでもあるんだけど、キルホーマンらしい麦感に代表されるボディが、欲しいところになくてドライに感じることがあったと感じていました。このアイラフェスのように、シェリーとのバッティングをキルホーマンが多用する理由は、おそらくこの点を睨んでのことと推察します。即ち、シェリーカスクが混じることでボディに厚みが増し、またフルーツ感も多彩になるということです。樽に支配されたものではなく、しっかりとハウススタイルの良さを出しながら、それを強調するような樽使いをしているのだ、という印象を持ちました。これはあくまでキルホーマンの原酒の味わいがしっかりしているから、このようなリリースが可能になるのでしょう。この熟成年数で十分仕上がっており、昔のシングルモルトの熟成年数が短くても十分リリース可能な仕上がりだったのも、(スペシャルなリリースとはいえ)これを飲めば納得が行きます。

とにかく、素晴らしいリリースでした。テイスティングコメントは数回飲んだものを記載したものなのでまだ全容はつかめていませんが、上記のように着目すべき素晴らしいポイントがたくさんありますので、是非見かけた際は飲んでみてほしいボトルです。

テイスティングコメント

香りはトップに力強い麦やバタースコッチ、時間経過で様々な香味が出てくる。マスカットやグレープフルーツ、白ワイン、アプリコット、ハニーシロップ、カツオだしや海藻とピート、バーベキューの燃えカス、少し金属感、後にしっかりとした麦感と水飴。
飲む、力強くこくのある麦、サバやカツオだしなどのうまみの後にホワイトペッパー、アプリコット、ミネラル、ハニーシロップ、バニラ、海藻、余韻にはバーベキューの煙を纏ったピート、塩素、奥にメロンやオレンジといったフルーツ感

少量加水で味わいはバラバラになり、麦の甘味が前面に出てきたりと全く違う顔が出てくる。

評価

S

コメント

タイトルとURLをコピーしました