クライヌリッシュ 2011-2020 9年 60.1% シングルカスクネーション

ハイランド
bsh
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ボトルスペック

生産地域:ハイランド
蒸留所名:クライヌリッシュ
オフィシャル/ボトラー名:シングルカスクネーション
樽の種類:セカンドフィル・バーボンバレル
カスクナンバー:#800315
蒸留年:2011
熟成年数:9年
ボトリング年:2020

Clynelish distillery
bottler: Single Cask Nation
aged 9 years

60.1 %
2nd fill bourbon barrel
O/T: 244 bottles

解説

クライヌリッシュ

1819年にサザーランド公爵によって設立されたクライヌリッシュ。紆余曲折あり1925年にDCL社の傘下になってから、同系列を代表する蒸留所の一つ隣、現在ディアジオグループの蒸留所の一つになっています。1967年にクライヌリッシュは同じ敷地内に蒸留所が新設され、そちらがクライヌリッシュと呼ばれるようになりました。古い蒸留所はクライヌリッシュBとされ、1968年に閉鎖されたものの、1969年からはブローラと改名され、ピーティなモルトを製造する蒸留所となりました。これはアイラ島が干ばつに遭い、水不足とアイラ島内での麦がうまく育たなかったことが理由になります。同時期にDCLはグレンギリーを売却し、すぐにウイスキーが製造できるブローラに着目したようです。

同蒸留所の特徴とも言われるワクシーな味わいは、過去のドリンカーから現在のドリンカーまで人気を博しています。過去には1972や1982ビンテージのクライヌリッシュはとってもワクシーで人気がありましたが、近年はこれらのビンテージのリリースはほとんどなくなってしまいました。その後も1989や1993のビンテージが出てきて、1995が多くのビンテージがリリースされた記憶があります。96はリリースが少なかったですが、1997は多くのリリースがありました。しかし90年度のリリースもここ2-3年はほとんどなくなり、2000年台のリリースが散見される様になりました。ボトラーズ界隈ではここ2年ほど、1983やその他の年代で、シークレットハイランド名義でクライヌリッシュがリリースされるようになりましたが、これらシークレットハイランドは愛好家が思う味わいとは若干異なることも多くあり、リリースのムラが大きいなというのが個人的な感想です(中にはとても良いリリースもあります)。

シングルカスクネーション

アメリカの新興ボトラー、シングルカスクネーション。ユダヤ系アメリカ人のジョシュア・ハットンがCEO、スコットランド人のジェイソン・ジョンストーン・イェーリンがCOOとなり、2011年より活動しています。ハットン氏は手広くウイスキーに関する事業を手がけており、Whisky Jewbileeと呼ばれるウイスキーフェスティバルをシアトル、ニューヨーク、シカゴで行っています。アメリカではウイスキーフェスが多くないようですが、このフェスではElijah Craig、Wild Turkey、Westland、High West、Kovalなどのオリジナルボトルをリリースするなど、アメリカならではのフェスが行われているようです。

また米国内のみになりますが、Singlecasknation.comでは会員向けのボトルリリースを行なっており、通常の世界流通のボトラーとしての側面とともに、会員制ボトラーとしての側面も持っています。手広く様々なイベントが行われており、同国でのスコッチ系のウイスキー文化の発展に貢献されている方なのだなと感じさせます。

今回、スリーリバースがシングルカスクネーションの取り扱いを開始しました。このボトルは同ボトラーの日本流通ボトル第1弾となりました。スリーリバースの久しぶりの新たなウイスキーボトラーの取り扱いに期待を膨らませた方も多いのではないでしょうか。

考察

2000年代後半より、クライヌリッシュは安定したリリースが多くなってきたように感じます。シグナトリー周りで時々出てくる2008年以降のクライヌリッシュは、昔のクライヌリッシュと同一とは言いませんが安定して良いものでしたので、このリリースも楽しみにしていました。スペックもかなり面白く、リフィルバレルで9年というあまりみたことがないスペック。飲んでみると熟成感はちゃんとあり、特に洋菓子のような香りが特に良いんですよね。味わいも、甘みを伴ったクリーミーな味わいがあり(90年代とは別物と感じますが)良さを感じるリリースでした。短熟リフィルは前の原酒が混じっているために、香味が複雑になりやすいという指摘もあります。今回のボトルもそのような立ち位置にあるボトルかなと思われました。

前述したように00年代後半から良いリリースがちらほら見えるようになりましたが、今回の11クライヌリッシュも短熟ながら光るものがみられるリリースでした。個人的には2016年くらいの蒸留までは良い傾向が続くと良いなと思っています。

クライヌリッシュのワクシーさはどこからくるのか、さまざまな議論がなされています。一説にはポットスチルのラインアームを洗浄していなかったためにこのような味わいができるという話、またローワイン(初留後のもろみのこと)、フォアショット(再留初期の蒸留液のことで不純物が多いため回収し再留に戻す)、テール(再留の最後の方の蒸留液のことで、フォアショットと合わせてフェインツということも)を保管するタンクが別々に保管されているために、もろみが溜まったローワインを蒸留しやすい説、また木製ウォッシュバックによる発酵が80時間あり、このウォッシュバックもそこまで丁寧に洗わないようにしている説など、さまざまな噂がなされています。

ドリンカーとしてはこのようなハウススタイルを維持しようと蒸留所側が努力していることは嬉しいことと思います。一方、2016年から2017年にかけて、クライヌリッシュはウォッシュバックの再整備などを行い、機械化を進めたようです。今までのようなワクシーなハウススタイルが失われた味にならないことを祈るばかりです。

評価

評価:A+

テイスティングコメント

香りはカスタードクリーム、プリンアラモード、ライム、グラニュー糖
飲むと香りよりはドライでパワフル、マスカット味のキャンディー、しっかりとした麦感、笹の葉
余韻はチリパウダー、ハーブ

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