クライヌリッシュ 1995 23年エクスチェンジ向け 55.4%

Clynelish 1995 ウイスキーエクスチェンジ向け ハイランド
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しっかりと甘みを伴ったシェリーバットの甘みと、ワクシーな原酒の融合。
20周年を迎えるTWEの圧倒的な周年リリースの中でも、注目すべき1本。

ボトルスペック

生産地域:ハイランド
蒸留所名:クライヌリッシュ
オフィシャル/ボトラー名:シグナトリー エクスチェンジ向け
樽の種類:リフィルシェリーバット
カスクナンバー:#11252
蒸留年:1995
熟成年数:23年
ボトリング年:2019

Clynelish distillery
Signatory Vintage for THE WHISKY EXCHANGE 20th ANNIVERSARY
1995-2019
aged 23 years
55.4%
Cask no. #11252
Cask type: Refill Sherry Butt
O/T: 550 bottles

解説

 2019年に200周年を迎えたクライヌリッシュ蒸留所。クライヌリッシュの歴史については過去の記事をご参照ください。

クライヌリッシュやブローラの関係などは、こちらに記載しました。

 今回はイギリスの酒屋THE WHISKY EXCHANGE(以下TWE)の20周年を記念してリリースされたボトルの紹介です。TWEはインド系イギリス人Sukhinder Singh(スキンダー・シン)と Rajbir Singhの兄弟によって  設立された酒屋です。元々両親がTHE NESTというワイン商で、当時からウイスキーをコレクションしていましたが、1999年に両親が店をたたむこととなり、家族経営をやめ、兄弟でTWEを設立したようです。ウイスキーがここまで好景気になる以前からウイスキーをたくさん購入していたようで、それが現在の素晴らしいリリースにつながっています。

1999年よりトレーディングのサイトを設立、2006年よりOnline shopを開始、最近では注文すると1週間以内にDHLで届きますので、日本の酒屋のように利用している方も多いように思います。ボトラーズとしてはSpeciality drinks、最近は分社化しElixir Distillers名義で様々なオリジナルリリースを行っています。

考察

 さて、バイセンテナリーを迎えた年だからか、オフィシャルのみならずボトラーズもクライヌリッシュのオフィシャルのリリースがちらほら見られた気がします。クライヌリッシュといえば代表される香味はワクシーな味わい。しかし気のせいか近年少し穏やかになってきている印象でもあります。そういうなかで次に述べるように、1995ビンテージはドリンカーにとって境界線になるようなビンテージかもしれません。
クライヌリッシュがグレートヴィンテージとして知られるようになったビンテージは1972、ついで1982あたりではないでしょうか。このグレートヴィンテージ、ボトラーズに偶々多く放出した年ともとれますので、良ボトルが多い=グレートヴィンテージと端的に言うのも引っかかるのですが、その頃のボトルはもう手に入らなくなってきています。

80年代や90年代にウイスキーを飲めていた人ではないので、当時の味わいは想像でしかないのですが、経年変化で美味しくなったんだろうというボトルもあれば、逆に美味しいと言われたものがちょっとピークを過ぎていたり、、といった苦い経験はウイスキーにはつきもの。様々なウイスキーの飲み頃はそれぞれ違うと思いますが、その飲み頃が未来ならその時まで待つのみです。業界的には80年代~90年代のウイスキー冬の時代があり、そこまで質の高くないリリースが多かったことがわかりにくくしてしまっていますが、私としては「90年代後半から00年代のウイスキーはそのうち70年代にリリースされたボトルに匹敵するものやそれ以上がたくさん出てくる」という主張を支持しています。実際にどうなるかは分かりませんが、それは時間が経てばわかることですので、気長に待つこととします(付け加えるならば、70年代の長熟のボトルがたくさんリリースされたこともある意味ウイスキードリンカーにとってはある意味不運で、あの長熟フルーティな系統が好きな方は今のウイスキーは面白くないだろうなとも思います)。

一方で今と昔のウイスキーで味が変わったという主張があるのも事実で、シェリーの味わいであったり、重い麦感のあるウイスキーが少なくなったり、南国フルーツがなくなり紙っぽさが出てくるようになったり…一方でシェリーの硫黄感は最近少なくなってきましたし、短熟でも仕上がった良い樽のウイスキーも増えてきました。この時代の流れは良いことも悪いこともあり、これについてどうこうと言う気はないですが、シングルモルトという個性を味わう飲み物において、失われていく味わいがあるのは事実としてあるわけです。ドリンカーとしては、この失われた味わいにロマンやある種のノスタルジアが生まれるのは必然ではないかとも思います。

クライヌリッシュについても、失われたと形容するにはちょっと言い過ぎかもしれませんが、90年代後半は少しワクシーで芯のある味わいは少なくなってきたように思いますし、そういう点で95ビンテージというのは今の時代高嶺の花になりつつあるものなのかもしれません。もちろん、95や90年代後半のビンテージが今後どんどん良くなって70年代っぽくなっていくのかもしれませんが、ちょっと無骨さを伴う95ビンテージは、少しずつ味わいが変化してきているという点で(少なくとも私にとっては)クライヌリッシュの境目とも感じるビンテージなのです。

このボトルは95で甘みの強い味わいのシェリー感、それとワクシーなニュアンスもしっかりと感じるボトルでした。樽由来と思われるフルーツやチョコレート感に、バニラやワクシーなニュアンスも混じってくるボトルです。「最近手に入りやすい、95らしい95ビンテージのボトルが見つからないなあ」と昨年くらいに思っていた自分にとって、なかなか良い味わいのボトルでした。開栓後も甘みやフルーツ感とワクシーなニュアンスのバランスは変わってきており、落ち着いたときはどういう味わいになるのかが楽しみです。

こんな樽を隠し持っていたシグナトリーと、こんな樽をこんな時代にこんな価格で出せたTWEの凄さを感じるボトルでした。20周年をお祝いするとともに、この時代のボトルは少し抱えておきたいなと改めて思わせてくれました。

評価

評価:A++

テイスティングコメント

香りは甘いシェリー香。ナッツ、ミルクコーヒー、バニラ、オレンジ入りのチョコレート
飲むと香りに違わぬ甘みのあるシェリー感。フルーツソース入りのチョコレート、バニラ、すりつぶしたナッツ、余韻はワクシーでマーマレードの酸味が抜ける。

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