ベンロマック 15年 2020年ニューラベル 43%

ベンロマック15年 スペイサイド
ベンロマック15年 https://drinkers-lounge.com/2020/06/28/benromach-15y-43-ob-new-2020/ より許可を得て転載
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ベンロマック Benromach 15年 2020年ニューボトル

ボトルスペック

生産地域:スペイサイド
蒸留所名:ベンロマック
オフィシャル/ボトラー名:オフィシャル(G&M)

熟成年数:15年
ボトリング年:2020

Benromach distillery
bottler: Official (G&M)
aged 15 years
43 %

解説

ベンロマック蒸留所

歴史

スペイサイド西側のフォレス地区に唯一稼働している蒸留所、ベンロマック。1898年にキャンベルタウンのグレン・ネヴィス蒸留所のダンカン・マッカラムと、ディーラーであったF.W.ブリックマンにより、独立資本のBenromach Distillery Companyとして設立されました。しかし蒸留所の経営は2年で破綻し稼働休止に追い込まれるなど、前途多難な道をたどります。数々のオーナーの変遷を経て、1953年にはDCLの傘下に入りますが、1983年に閉鎖。このまま閉鎖の道を辿ってもおかしくない状態でしたが、1993年にゴードン&マクファイル(G&M)が(厳密にはGordon & Mcphailは商号で、屋号スペイモルト・ウィスキー・ディストリビュータというらしいですが)買収し、復活することとなりました。再開には5年の歳月を要し、1998年より蒸留再開、2009年にはベンロマック10年が発売されるなど、現在のラインナップに至ります。2012年にはBenromach Distillery Companyで法人化し、創業当時の屋号で生産を続けています(G&M、SPEYMALT WHISKY DISTRIBUTORSの子会社という位置づけです)。

製法の特徴

ベンロマックの(製造時の)特徴を挙げるとするなら、以下の3つは欠かせないでしょう。①機械を使わない、昔ながらの手作業 ②長め発酵とエール酵母の使用 ③ライトピーテッド。

ゴードン&マクファイルがベンロマックを再稼働させるにあたって、目指したウイスキーは1950~1960年代のウイスキー黄金期のスペイサイドモルト。当時はライトピーテッドのウイスキーが主体であり、現在のスペイサイドとは系統はかなり違います。ベンロマックでは10ppmほどのライトピーテッドのモルトを使用しているとのことです。濁った麦汁を取っているとのことで理論上はモルティに振れるはずですが、ディスティラリー酵母のみならず3-5日のエール酵母を混合した発酵を行っており、おそらくこの点でフルーティーさが添えられるのだと思われます(近年、エール酵母を使用したクラフトディスティラリーも増えてきていますし、日本でもいくつかの蒸留所でエール酵母は使用されています)。蒸溜時のミドルカットは麦芽の種類で変えているようで、参考文献によるとライトリーピーテッドはアルコール度数61%、有機栽培のノンピート大麦モルトは62.8%、へビリーピーテッドはアルコール度数58%でカットされているよう。カスクエンドは63.5%で、ヨーロピアンオークのシェリーカスクがメインという情報ですが、リリースを見る限りはバーボンバレルの方が多いようにも思え、この辺りは謎です。ゴードン&マクファイルはボトラーズの中でも珍しく、ニューメイクで購入して自身で樽を調達し詰めているボトラーズですから、カスクマネジメントはお家芸といっても異論はないでしょう。

リリース

日本の取り扱いがJapan Import Systemで、同社のG&Mとの強力なコネクションのおかげか、ここ数年はベンロマックの日本向けのリリースもたくさんあります(ジャパンインポートシステムさんは、G&M以外にも日本向けリリースは多くあります)。Benromach Lovers in Japanと称したリリースや、ウイスキー文化研究所、信濃屋、ウイスキーフープ、モルトヤマ、キャンベルタウンロッホ(20周年記念ボトル)など、私が思いつくだけでも何本も日本向けのリリースがあります。
噂では2003年以前の樽は少ないようで、入手困難かつ手に入ったとしてもかなり高騰していると聞きます。ただ先述のキャンベルタウンロッホさんのリリースは00年、フープのリリースは02年と、レアなカスクが日本に入っており、ことベンロマックに関していえば日本はかなり恵まれていると言ってよいでしょう(古いビンテージが美味しいというわけではなく、他の信濃屋さんをはじめとする各種PBはどれもおいしかったですし、味わいのバリエーションがあるのが印象的です)。

オフィシャルスタンダードのボトルも評判がよく、ベンロマック10年や15年は以前からハイボールでもストレートでも評価が高いのかなと、皆さんのツイートなどを見ても感じます。ここ最近で言えば、ドリンカーズラウンジDrinker’s LoungeのYakuさんがTwitterで同ボトルをガンガン推しており、ステマではなく本当にお気に入りのボトルのようです。

Yakuさんからドリシェアでサンプルをいただきました。

2020年、ベンロマックのボトルデザインが一新されるという衝撃のニュースが飛び込みました。

ベンロマック15年 ニューラベル
https://drinkers-lounge.com/2020/06/28/benromach-15y-43-ob-new-2020/より許可を得て転載。

今までの少しオシャレなボトルデザインから一新、シンプルなデザインになりました。レトロと言えばレトロに見えるのかもしれません。デザイン面では物議を醸したこのボトルですが、中身は評判が良く、気になったので早速試してみました。

考察

今回はYakuさんよりサンプルボトルをいただきました。ありがとうございます。香りのトップからはうっすらと硝煙や温泉街でほんのり感じる硫黄感が若干ありますが、いわゆるサルファと言われるネガティブなものではなく、原酒に厚みを持たせるタイプのものと感じます。そこからローストしたナッツやめんつゆっぽい出汁感、その後グレープフルーツなどの柑橘感と、多層的な香りがあります。

飲んでみると焦げたニュアンスやタール、オイリーさもまあまああるんですが、しっかりとした麦とフルーティーさ、甘さがあり、ボディも繊細ながらそこまで細すぎることがなく、飲んでいて結構楽しいボトルです。芯にあるのは透き通った感じではなく、ちょっと汚れたような、もさっとした感覚があるんですが、そこに麦やフルーツ、オイルなどいろんな味わいが重なっていて、結構おいしいボトルです。焦げた感じやアーシー、ライトピーテッドのニュアンス、バーボンバレルっぽいフルーツ感から、「スプリングバンクから塩感が抜けた感じ」と評する人もいましたが、そう言いたくなるのも分かる味わいです。個人的にはスプリングバンクのピートにあるシダ植物のような味わいはないのでバンクっぽさというと少しずれる印象があります。タール感などに近いでしょうか。敢えて例えるなら、70年代のノースポートなどに少し近い感じかなと思います。

こういうボトルは好みがわかれるように思います。好みの問題と言ってしまえばそれなのですが、私の評価基準ではそれ単体では好まれにくい香味があっても、良い要素、らしさがしっかりとあれば良いボトルだと感じる傾向があります。そういう意味で結構好印象なリリースでした。いずれにせよ、ベンロマックで言えば15年のオフィシャルスタンダードでここまで多層的で厚みがあるリリースはあまり知らず、好きか嫌いかは置いておいて、現在のモルト市場を語るなら一度飲んでおいた方が良いリリースだなと思いました。オフィシャルスタンダードのボトルも侮れませんね。当ブログの基準上A+という形にしてますが、某雑誌なら86-88点くらい行くかもしれない、結構いいボトルでした。

評価

評価:A+(~A++)

テイスティングコメント

香りは硝煙や温泉地の硫黄感がほんのりと香るがすぐに消える。アーシー、オイリー、ローストしたミックスナッツ、めんつゆっぽい出汁感と甘味やうま味、グレープフルーツ、奥から麦感もしっかりと出てくる、
飲むと少し焦げを伴ったしっかりとした麦感、うっすら硝煙とタール、みりん風調味料などのうま味、カカオ、和風だしの塩味、飲み進めていくとラズベリージャムや焦がしカラメルとクリームブリュレの洋菓子チックな甘味も。
余韻は長く、舌に残るピートや和三盆などの甘味、にがり、粉っぽさ、ナッティでスパイシー。

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