グレントファース 1996-2017 21年 シグナトリー　49.5%

ボトルスペック

生産地域：スペイサイド
蒸留所名：グレントファース
オフィシャル/ボトラー名：シグナトリーヴィンテージ
樽の種類：バーボンバレル
カスクナンバー：1392+1400
蒸留年：1996
熟成年数：21年
ボトリング年： 2017

解説

現在シーバスブラザーズ社が所有しているグレントファース。元々1897年にジェームズ・ブキャナン社が原酒供給のために設立し、1925年にDCL社が買収、1985年に蒸留所は休止となり、アライド社に買収され、以後バランタインの原酒供給に使われるようになりましたが、2005年にシーバスブラザーズ（ペルノ・リカール）がアライド社を買収し、現在は同社が所有する蒸留所となりました。現在はバランタインやブラックアンドホワイトのキーモルトとして使われていますが、最近バランタインシリーズとしてグレントファースの15年がオフィシャルでリリースされたのは、普段からバーなどでシングルモルトに触れている方々からすれば記憶に新しいと思います。

ボトラーズはシグナトリー・ヴィンテージ社。通常シグナトリーと呼称されることの多い同社ですが、今では4大ボトラーの一つとも言われ、その豊富な在庫量はボトラーズ不遇の時代となった今や、G&Mと双璧を為すと言っても過言ではないでしょう。世界的に有名なウイスキー酒屋、THE WHISKY EXCHANGE（イギリス）やLA MAISONS DU WHISKY（LMDW:フランス）のオリジナルボトルの主要供給元の一つであり、例えばメゾンのArtistシリーズはシグナトリーの樽をボトリングしてあることを明記しています。日本の代理店はボリニ・ジャパンさんで、THE WHISKY HOOPや信濃屋さんの精力的な活動もあり、シグナトリー側からは日本市場を重要な市場と捉えていただいているようです。そのせいもあってか、日本の両ボトラーからは素晴らしいリリースが多く出ていますし、それだけ信頼関係を構築できているのでしょう。昔でこそシグナトリーは「安かろう悪かろう」と言われた時代もありましたが、そのような時代は終焉を迎えたと個人的には思っています。確かに同社は同じビンテージを何樽も購入していることが多く、良い樽もあれば第一線とは言えないボトルもありますが、逆にそれだけの豊富なストックを抱えないことには良い樽を手に入れることもできないのでしょう。1988年創業、2018年に30周年を迎え、周年のリリースが多くありました。10万円オーバーのボトルも多く、なかなか購入に踏み切れないものが多かったですが、本ボトルのような通常リリースのボトルは昨今の市場を鑑みれば良心的な価格が多く、気になるビンテージがあれば押さえておくのも良いかもしれません。

感想

さて、このボトルですがマスカットやオレンジ、少し綿菓子のようなほんのりとした優しい甘みとエステリー感が中心的な、優しいボトルです。元々グレントファース自体は原酒がパワフルなものではなく、こういう柔らかい、優しい香味が特徴的だと考えますが、このボトルはバーボンバレルで熟成されている割にあまりバーボンの香味が支配的ではなく、バランスが良いんですよね。ここでオレンジの感じがドカンと来てしまうと、それはそれで美味しいんでしょうが、せっかくならトラースらしさが十分に感じられる方が個人的には好みです。

王道の味わいだと思いますが、そこまでグレントファースのシングルカスクも見なくなりましたし、なかなか良いボトルだと思います。ウイスキーをあまり飲まれたことのない方でも、少し瓶熟させたり、ほんの数滴の加水をするだけでアルコールの刺々しさが更になくなり、好みに近づくのではないかと思います。派手ではないですがグレントファースに求めたくなるような味わいをしっかりと感じ、かつ嫌な要素がほとんどない、とても良いボトルでした。

評価

評価：A++

テイスティングコメント

香りは綿菓子、マスカット、オレンジ、ホイップクリーム、スパイス。穏やかで心地よい。
飲むとスムースな味わい。マスカット、オレンジ、バニラ、ハニーシロップ、程よいタンニン。

言いたいこと

モルトを飲み慣れていない人でも、蒸留酒がいける人なら多分苦手じゃないだろう、手頃でスムースな味わいが美味しい佳酒。