キルケラン 8年 カスクストレングス 57.1% 2019年リリース(日本では2020年リリース)

キルケラン 8年 キャンベルタウン
キルケラン 8年
この記事は約5分で読めます。

今年再稼働15周年を迎える新興蒸留所は、伝統的なキャンベルタウンの味わいをも再興しようとしている。古き良きテイストがあるリリース。

ボトルスペック

生産地域:キャンベルタウン
蒸留所名:グレンガイル蒸留所(キルケラン)
オフィシャル/ボトラー名:オフィシャル
樽の種類:不明
カスクナンバー:—
蒸留年:–
熟成年数:8年
ボトリング年:2019

解説

元々1872年にウィリアム&ミッチェル社により作られたグレンガイル蒸留所。1873年に蒸留を開始しますが、1919年に当時のWest Highland MatDistilleries社に売却され、1925年に蒸留所は一旦閉鎖してしまいます。1941年にはグレンスコシアとともにブロックブラザーズに買収され、農場やライフル射撃場として用いられていましたが、2000年にスプリングバンク蒸留所のオーナーであるJ&Aミッチェルが買い取ることとなります。その理由の(一つ)は、スコッチウイスキー協会が定める地域のレギュレーションに、「その地域に蒸留所が3つ以上あること」というものを意識していたとされます。スプリングバンクとグレンスコシアしかないキャンベルタウンは、このままではキャンベルタウンという地域がスコッチウイスキー協会から消滅することを意味していたというわけです。とにもかくにもこうして2004年にはグレンガイル蒸留所が復活することとなったのです。グレンガイルの標章権はブロックブラザーズに買収された関係で、現在グレンスコシアオーナーであるロッホ・ローモンドディスティラリーズが有しており、グレンガイル蒸留所はグレンガイルというウイスキーを発売することができず、キルケランというブランドで売り出すこととなりました。

キルケランはスプリングバンクと同じJ&Aミッチェルの蒸留所ですので、作りなども結構スプリングバンクと似ているところがあります。仕込み水はスプリングバンクと同じクロスヒルズの湖から、麦芽はスプリングバンクのフロアモルティングを使用、ウオッシュバックは木製で一個はベンウィヴィスのものを使用しているようです。

スプリングバンクのノウハウを持ちつつも、あくまで新興蒸留所。最初は”Work in Progress”シリーズを2009年より毎年リリースしていました。当初はそこまで大きな話題になっていなかったと思いますが、生産本数が少ないこともあってか市場からはまあまあのスピードで完売。Work in Progressシリーズがなくなり、2016年にキルケラン12年をレギュラーで商品化するようになってからはドリンカーの評価も上々になってきたように感じます。今回のボトルではありませんが、スタンダードのキルケラン12年は価格を考慮しなくても傑作と言わざるを得ないボトルで、これが5000-6000円で買えることを考えると良い意味でどうかしていると言いたくなります(これが売れ残っていることもどうかしているとも思います)。シングルモルトを飲み始めの方が一本買って飲んでみたいと言われれば、私はキルケラン12年かベンロマック10年を勧めていますが、少なくとも私の中ではスコッチウイスキーのど真ん中を行くようなボトルだと思います。

さて、このグレンガイル蒸留所は2019年に再興後15年を迎えました。それを記念してか、グレンガイルは各地域向けにキルケラン15年のリリースと8年のリリースを行いました。15年のオロロソは高い評判を持ってドリンカーに受け入れられたように思いますが、今年の8年も負けず劣らず秀逸なボトルでした。

考察

今年の8年はシェリーカスクでの熟成。57.1%とカスクストレングスでのリリースです。おそらく英国内でしかまだ出荷されておらず、ワールドワイドに発売されるかは分かりませんが、TWEやMoM、TWBあたりの有名所は見たときにはどこも売り切れていました。年末に東京のバーでいただいたときにあまりに驚いたボトルの一つでした。ピートの混じったシェリーカスクですが、とてもバンクっぽいと言うか、シェリーが今どきのバンク18年あたりのシェリーとは全く質が違って昔っぽいんですよね。異論を唱える人はいそうですが、渡しは70年代のシェリーカスクのバンクと少し似たニュアンスを感じました。

8年という熟成年数も抜群に良いように思います。ここまで濃厚なシェリーカスクだと、10年も熟成させてしまうとシェリーの香味が支配的になってしまいかねません。元々のバンクやキルケランの酒質がしっかりしていることもあり、8年くらいだとちょうどシェリーの香味と原酒のバランスが良いのかなと推察します。まだちぐはく感は多少あり、複雑さが強いというものではないですが、時間経過で一体感が増したときは、この価格とスペックでは信じられないような味わいになると推測しています。

ここ数年2000年代や2010年代蒸留のボトルが短熟でリリースされるケースが時々ありますが、あれのメッセージって結局の所「樽が良ければ熟成年数そこまで行かなくても結構良いの出来るよ」っていうことだと思うんですよね。ことキルケランに関して言えば、12年のクオリティを鑑みるに8年のクオリティは偶然ではなく安定してリリースされると推測します。目が離せない蒸留所の一つになりました。

都内某所でいただいたキルケラン8年。

余談

2020年もよろしくお願い致します。

評価

評価:A++

テイスティングコメント

香りはプラム、枝付きレーズン、ナッツ、生ハム、土っぽさを伴うピート。
飲むとココア、プラム、生ハム、バニラ、オレンジ、ナッツ、ややアーシーでピーティ。余韻は長くナッティでスパイシー。

言いたかったこと

キルケランはすごい蒸留所。長期熟成が必ずしも良いとも限らないし、樽が良ければ短熟でもちゃんとしたものになる。

コメント

タイトルとURLをコピーしました