脱・ウイスキー初心者への道③ 香味の「解像度」を上げるには

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解説本には載っていないウイスキー講座、今回も脱・ウイスキー初心者への道を続けます。
前回はウイスキーの香味の解像度という話をしました。今回からは香味の解像度をどうやって上げていくか、そのアプローチについて説明します。

解像度が上がるとは、受け取る情報量が広がるということ。せっかく飲むのなら、より多くのものを感じられた方が面白いのではないでしょうか。

前回の脱・ウイスキー初心者への道②はここからどうぞ。

初めから読む方は脱・ウイスキー初心者への道①へ、下のリンクよりどうぞ。

解像度の上げ方

少し似ているボトル同士を比べる

前節の説明で、「きちんとテイスティングできなければ、ウイスキーのおいしさは分からない」と感じたかもしれません。でもそれは好き嫌いを決めつけるべきではないという文脈では正しいのですが、美味しい、美味しくないと感じることはモノを摂取することにおいて当然のこと。その時に大事なことは、どの点に着目し、そのどれが好みかどうかを知るということです。前項のりんごのモザイクにもう一度登場してもらいましょう。

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このリンゴのモザイクをより深くするにはどうすればいいでしょうか?一番わかりやすいのは比較することです。例えば下の画像を見てみましょう。

この状態で何か判断するのは至難の業でしょう。しかしながら、りんごの画像とこの画像とを比較すれば、

①新しい画像は茶色いところが少ない

②新しい画像は緑色が左側にある

ということは分かりますね。

(赤色も微妙に違いますが、同じようなものだとここでは考えます)

これで後者の画像の方がより好ましいと感じるのであれば、茶色より緑色の方が好きなのかもしれません。このようにウイスキー同士の比較を行うことで、解像度が低い状態でもウイスキーを相対的に知ることができるのです。

ちなみに、この画像はなんだか上の時点でわかったでしょうか?多くの人が識別困難だと思います。

下のモザイクだと答えがわかるかもしれませんね。でもまだはっきりと何かを認識できないとも言える、微妙な解像度です。

モザイクなしの写真は下の通り。

こちらはイチゴと一発で理解できますね。大事なことは知覚情報の解像度が低くても、比較することで相対的にそのものを理解することができる、ということです。

ここで注意点が一つ。比較する対象のものには、共通項を設けて比較するほうが良いでしょう。

例えば下の画像、共通する赤い部分がほぼないですよね。

これでどちらが好きかといわれても、赤と黄の区別はできますが、ディテールまで論じるのはやや難しくなるでしょう。ウイスキーでいうならピートの有無くらい大きな違いになります。こうなると、何が好きで何が苦手かの精度が下がってしまいます。ここはある程度共通項があるウイスキー同士を比べることで、共通項と相違項が徐々に理解されるものと認識するのが良いでしょう。

ちなみに上の画像はカボチャでした。

共通項がある程度あるウイスキーを飲み進めることで、共通する香味の輪郭がはっきりとわかってきたり、違いが分かってきたりするものです。有名なモルトバーの店主の方の一部には、初心者に対してはしれっとこういう「ずらし」を与えて経験値をつけさせている方もいるように思います。

下の模式図は、A/B/Cという三つのボトルから感じる香味をごく単純に円で示したものです。同じような香味は重なり、濃い青色で表現されます。濃い青色で表現されるものが多いほど、共通となる香味が多いということですね。

例えばA/B/Cの3つのボトルの共通項・相違項が下の模式図程度だったとしましょう。これらを飲み比べると、共通した部分と違う部分を感じ取ることで、ボトルの差を知ることができます。

最初のうちは「ピート」「シェリー」「アイリッシュ」など、ざっくりな分類でもよいでしょう。ある程度共通項やテーマをもって数本比較することで、各ウイスキーへの洞察が深まるでしょう。この方法は自力で、手元にあるボトルがある程度あれば似たようなことができ、ある程度の考察が出来るようになります。解像度が上がってくればより細かい分類で組み立てていけばいいのです。宅飲みでも十分効力を発揮する方法ではないでしょうか。

上の図のように、全然共通項のないウイスキーを飲んでみるのはどうでしょうか。本当に初心者の人へのとっかかりとして、違いを知ってもらうという目的では、共通項のあまりない極端なラインナップで組み立てて、それを飲んでもらうということは有効と感じています。ウイスキーの味わいの幅広さというのはウイスキーの魅力の一つです。しかしウイスキーにハマってしまい、たくさんのウイスキーを経験したいと思う人はどうでしょうか。あまりにバラバラすぎると、比較するものがないので全体像がぼやけてとしかとらえられず、せっかくの経験もうまく消化できない恐れがあります。テイスティング会やバーの常連さんがめきめきとウイスキー好きになっていく過程見ていくと、やはり共通項を少し持って組み立てていった方がウイスキーの理解が早い様に感じるんですよね。誰かに組み立ててもらう分には良いのですが、自分で掘り下げるときは共通項があった方がウイスキーを知るというテーマにおいて着地しやすいでしょう。

言われてみれば、バーテンダーさんから全然違うウイスキーを教えてもらった時もあったけれど、自分で探すのも大変だし、気に入らなかったらどうしようと思ってなかなか自分ではボトルを買わずにいました。

敢えて少し好みから外したものを織り交ぜるバーテンダーさんもいるみたいだね。賛否あるのかもしれないけれど、自分はそういう機会をもらえる方がウイスキーをより好きになるんじゃないかなと思うね。


本稿では香味の解像度を上げる方法として、共通項を持って比較するという手法を紹介しました。香味の解像度を上げる方法はほかにあるでしょうか。次節で他の方法を考えていきましょう。

以下のリンクよりどうぞ。

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