脱・ウイスキー初心者への道④ 香味の解像度とテイスティングコメント

脱・ウイスキー初心者への道
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前項までは、香味の「解像度」の概念を提唱しました。そしてその「解像度」を上げる方法として、共通項を持って比較するという手法を紹介しました。さて本稿では、香味の「解像度」を上げる方法がほかにあるかどうかをみていきます。

テイスティングコメントを参考にする

でもやっぱり、テイスティングコメント書いている人たちって凄いですよね。

あまりテイスティングコメントに拘るのは良くない、という意見はさっき伝えたけれど、トップのテイスターのテイスティングコメントは勉強になると思うよ。

そうなんですね!見てみたいんですが、例えばどれを参考にすべきでしょうか?

有名なドリンカーやテイスターはだいたい参考になると思うけれど、だれか一人を挙げるとするならばT.Matsukiこと松木先生かな。ウイスキーガロアのテイスターでストイックなドリンカーの日々というブログでテイスティングコメントやコメントも書いている。最近はコロナの影響で記事が激減してしまったけれど、比較的ニュートラルな記事が多く、ここ数年のリリースを見るには一番無難じゃないかなと思う。テイスティング以外の総評も当時のリリース状況を反映していて、かなり参考になったね。

2019年、2020年でかなりニューリリースを追っているテイスターが入れ替わったなと感じるけれど、やっぱり界隈で活躍されている人は勉強になるコメントが多いと思うな。

なるほど!見てみようと思います。

インポーターや蒸留所側のテイスティングコメントはこなれすぎていて参考にならないことも多いかもしれない。最近は、日本の酒屋から出ているPBのテイスティングコメントの一部はデフォルメせずに書いている人も複数出てきているような気もする。

2019年、2020年はウイスキーの高騰や新規ドリンカーが一気に増えたこと、またコロナの影響などが重なり、だいぶ飲み手の層が変わったなという印象を受けた2年でした。飲み手の層が変わること自体は良いことなのですが、往年のドリンカーから学ぶことは多いので、学べるところは学んでいくのが良いと思います。

おすすめのブログサイトを紹介するかどうかは悩みましたが、ここにアクセスするようなレベルの人は皆さん知っているようなブログばかりだと思いますので、ここでは紹介を割愛します。

テイスティングコメントをどう参考にするか

テイスティングコメントを参考にするときは、似たような香味が拾えるかをみていく。ただボトルによっては香味が拾いにくかったり、複雑すぎて特定の香味を拾うには適していないこともあることは知っておこう。

例えばどんなボトルが良いですか?

それに答えるのは結構難しいな。個人的には特徴がすごくはっきり出ているボトルを一度どこかで飲むと印象的になると思うんだけど、飲み始めはスタンダードボトルのミドルレンジクラス、だいたい5000円から1万円くらいのボトルを比較し始めるのが無難じゃないかなと思う。

テイスティングコメントを参考にするにも少しコツがあります。オールドボトルやカスクストレングスのボトルは経年変化や時間経過があり、状態や開栓時期により印象は大きく異なることがあります。そもそもそこを追うのも大変ですし、以前より追いにくくなっているのも確かです。もしテイスティングコメントを参考にしていくのなら、5000円から10000円くらいの範囲のボトルを飲み、有名どころのテイスティングコメントと比較していくのが良いかもしれません。

テイスティングコメントはどうして参考になるのでしょうか。これも前節の画像で表現しましょう。

パッと見ても、これが何だかわからないと思います。何か赤いもの、としか認識されないでしょう。ただここに①きれいなリンゴがある②左側に茶色い影があるというコメントがあればどうでしょう?なんかリンゴに見えてきませんか?テイスティングコメントは補助的に使用することでそのボトルの理解を伴います。

ただしその知識をすぐに応用するのはやめた方が良いこともあります。例えば下の画像を赤っぽいからという理由でリンゴと判断するのは早計ですよね。

実際はこれはサクランボでした。

サクランボがひとつの写真素材(無料)

ここで伝えたかったことは、解像度が低いうちはそれっぽく感じても、解像度が高く感じられる人にとっては違うものに感じるということが多々あるということです。テイスティングコメントをだれかと共有する際の表現として使おうにも、解像度が低い状態で無理にテイスティングコメントを伝えてもうまく共有できないかもしれません。テイスティングコメントが人と違っても、それ自体には問題はないのですが、ウイスキーを語るときに共通の認識がないと、意思疎通は当然できません解像度が低い状態でのテイスティングコメントにはコミュニケーションツールとしてはやや難があることを理解しておくことは必要でしょう。そして何度も言いますが、人と違うテイスティングコメントを書いたからって恥じることはありません。一人で完結している分には楽しめることであり、いろんな楽しみ方をすることは大事なことだと思います。

 テイスティングコメントが溢れるのも問題だなと最近は感じることも残念ながら増えてきました。なぜかというと、飲まずに人のテイスティングコメントだけでそのボトルを判断する方が増えてきたなと思うからです。特に、Aという香味があるからこのボトルはダメ、と決めつけるのは勿体ないように思います。

 テイスティングコメントは書く人やボトルの状態によってぶれ幅が大きい問題を抱えており、万能なものではありません。味わいは経時的に変化し、人によって感じ方は違うわけです。変化するものを、ぼんやりした(そして時に共通の香味からずれた認識で)伝えてることも多いのがテイスティングコメント。それだけでは判断が難しいことは当然ですし、テイスティングコメントを読みながら飲んでも最初はしっくりこないことがあるかもしれません。そもそも発信する人がどんな立場かによってテイスティングコメントって全然話が変わってくるように思います。そういう問題を抱えていることをわかってテイスティングコメントや評価を活用することは、おいしいウイスキーを探すのに有用だと思いますし、勉強にも役立つと思います。要は使い方なのだろうという結論に至ります。

 正直初心者のうちは、テイスティングコメントであの味わいがある、あの味わいがないと議論するよりも、ボトルを比較していく方がモルトを理解する速度が早まるのではないかと考えていますが、この辺りのアプローチの仕方は好き好きではありますね。迷ったら自分がやりたいようにやれば良いと思います。熱中し始めたらこちらのもの。好奇心が駆り立てられたらそのまま突き進んでいきましょう。大事なことは片意地張らずに楽しみ続けることです。いずれにしても他のボトルや他者の力を借りながらウイスキーを飲み進めていくことは、この「解像度」上達の早道だと思います。

この章のまとめ

解像度を上げる方法は2種類あり、一つは飲み比べること。もう一つはテイスティングコメントなど他者のアドバイスを参考にすること。

自分で飲み比べるボトルを選ぶときは、多少共通項があるボトルを比較した方がわかりやすいことの方が多い(違いを知るのが目的のテイスティングは例外)。

テイスティングコメントを参考にするのも良いが使い方には注意が必要。

一番大事なのは楽しみながら飲むこと。

さて、次の章からは目の前にあるウイスキーと、ウイスキーの知識について触れていきます。

下のリンクよりどうぞ。

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